‘小規模宅地等の特例’
相続発生から申告と納税までに必要な手続きは、どのようなものですか?
財産と債務の把握、これの承認又は放棄をします。そして、被相続人の所得税の申告、遺産の分割を経た後、相続税の申告と納税を行うという流れです。詳細は、次の通りとなります。
1.被相続人の死亡による相続発生後、7日以内に死亡届を、死亡診断書又は死亡検案書を添付した上で、区役所等に提出します。
2.葬儀費用の領収書等を整理します。
3.遺言書がある場合は、家庭裁判所で検認を受けた後に開封します(公正証書遺言は検認不要です)。
4.死因贈与契約書の有無を確認します。
5.相続人の確認を行います(被相続人と相続人の本籍地から戸籍謄本を取ります)。相続人に未成年者がいる場合は、家庭裁判所に特別代理人の申請をします。
6.財産と債務の概要を把握し、相続するか、限定承認するか、又は放棄するかを決めます。なお、相続開始後3ヶ月以内に放棄又は限定承認をしない場合、単純承認となります。
7.被相続人に確定申告義務があれば、相続人が被相続人の死亡の年の1月1日から死亡日までの確定申告を行います。なお、1月1日~3月15日に死亡した場合の前年の確定申告書及び準確定申告書の提出期限は共に、死亡日から4ヶ月以内となっています。
8.相続人の青色申告承認申請書を提出します。期限は、死亡日が1月1日~8月31日の場合は死亡日から4ヶ月以内、9月1日~10月31日の場合は12月31日、11月1日~12月31日の場合は翌年の2月15日です。
9.相続人の消費税の届出書を提出します(原則として死亡の年内)。
10.遺言が相続人の遺留分を侵害している場合は、遺留分の減殺請求ができます(相続開始後1年以内)。11.遺言書通りに相続する場合には、財産の名義変更手続きに移ります。
12.納税資金計画の検討を行います。具体的には、物納、延納、土地売却による納税が必要かどうかを検討します。
13.農家の場合には、農業を継承する相続人を検討します。
14.遺産分割協議書の作成は、法律等で義務付けられているものではありません。しかし、不動産の相続登記をする場合の添付資料として必要となり、また、相続税の申告書にもその写しを添付しますので、遺言書がある場合以外は遺産分割協議書を作成することとなります。
15.納税資金の準備、延納・物納・土地売却等の確定を行います。
16.被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署に申告、納税を行います(相続開始後10ヶ月以内)。遺産分割が終わらない場合、法定相続分で相続したものとして申告します(ただし、未分割の場合、原則として配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例、農地の納税猶予の特例は受けることができません)。
17.延納や物納の申請をする場合、申告と同時に行います。
18.不動産の相続登記や預貯金・有価証券等の名義書換を行います。
配偶者が現在、居住している家とその敷地になっている土地を、配偶者が相続しました。何か特典はありますか?
小規模宅地等の特例により、面積240㎡まで相続税評価額を80%減額できます。
1.小規模宅地等(特定居住用)
(1)概要
居住の用に供している宅地等を相続すると、一定の面積(小規模宅地等)について、要件を満たせば、通常の方法で評価した価額から次に掲げる面積について次の減額割合を乗じて計算した金額を評価減として控除することができます。
特定居住用宅地等 240㎡まで 80%
(2)特定居住用宅地等
特定居住用宅地等とは、被相続人等の居住の用に供されていた宅地で、取得者の中に「配偶者」、又は次のいずれかの要件を満たす「親族」がいる場合のものをいいます。
イ.同居親族で継続して居住している。
ロ.被相続人に配偶者又は同居親族がない場合に、3年以内に居住用の持家がなく、同居していない親族。
ハ.生計が一で、相続開始前から居住。
上記の要件を満たした親族が、当該宅地等を申告期限まで引き続き所有し、かつ申告期限まで引き続き居住している(ロのケースは除きます)場合に限り、80%減額の適用を受けることができます。
なお、平成22年3月31日までの相続又は遺贈については、取得者のうちの1人が上記要件を満たしていれば、全員が80%評価減の適用を受けることができました。しかし、改正によって、要件を満たす者以外の者は適用を受けられないこととなりました。
また、1棟の居住用併用建物についても、改正が行われました。平成22年3月31日までの相続又は遺贈については、1棟の建物の中に特定居住用部分と他の用途部分がある場合に、按分する必要はなく、全てが特定居住用として扱われます。したがって、例えば、全部が貸付用なら50%の評価減となりますが、一部分でも特定居住用なら240㎡までの部分ですが全体が80%の評価減となります。しかし、改正後の平成22年4月1日以降は、1棟の建物の敷地に特定居住用とそれ以外の利用があるなら、利用区分ごとに小規模宅地の判定を行うこととなりました。
(3)土地が複数ある場合
小規模宅地等の特例を複数の宅地に適用する場合、次の算式によって適用対象面積の調整が行われます。
A+B×5/3+C×2≦400㎡
A・・・特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等に該当する部分の合計面積
B・・・特定居住用宅地等に該当する部分の合計面積
C・・・貸付事業用宅地等に該当する部分の合計面積
2.適用要件
この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に、この特例の適用を受ける旨の記載及び計算
に関する明細書その他一定の書類を添付する必要があります。
なお、この特例は、相続税の申告期限までに相続人等によって分割されていない宅地等については、
適用を受けられません。ただし、申告期限までに分割されていない宅地等が、次のいずれかに該当す
ることとなったときには、適用を受けることができます。
・申告期限後3年以内に分割された場合
・期限後3年以内に分割できないことについてやむを得ない事情があり、所轄税務署長の承認を受け
た場合、分割できることとなった日として定められた一定の日から4ヶ月以内に分割されたとき
被相続人が事業の用に供していた土地を相続しました。何か特例が適用されますか?
被相続人の事業に使用されていた部分に限って、小規模宅地等の特例により、面積400㎡まで相続税評価額を80%減額できます。
1.小規模宅地等(特定事業用)
(1)概要
事業の用に供している宅地等を相続すると、一定の面積(小規模宅地等)については、通常の方法で評価した価額から次に掲げる面積について次の減額割合を乗じて計算した金額を評価減として控除できます。
特定事業用宅地等 400㎡まで 80%
(2)特定事業用宅地等
特定事業用宅地等とは、相続開始直前において被相続人等の事業の用に供されていた宅地等で、次のイ又はロに掲げる要件のいずれかを満たす被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したもの(その宅地等のうちイ又はロに掲げる要件に該当する親族が相続又は遺贈により取得した持分の割合に応ずる部分に限ります)もののことです。
イ.被相続人の事業用に使われていた宅地等を取得した被相続人の親族が、相続税の申告期限まで
の間にその宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を引き継ぎ、申告期限まで引き続きその宅
地等を有し、かつ、その事業を営んでいること。
ロ.被相続人と生計を一にしていた親族の事業用に使われていた宅地等をその親族が取得した場合
であって、その親族が相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続きその宅地等を自己の事業用に使用していること。
(3)被相続人等の事業の内容
不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業は、特定事業用宅地等に該当する事業から除外されます。
ただし、次の事業は不動産貸付業から除かれ、他の要件を満たせば特定事業用宅地等の特例の適用を受けられます。
・食事の提供を伴う下宿
・ビジネスホテル
・民宿
・ホテル
・その他上記に準ずる事業
(4)土地が複数ある場合
小規模宅地等の特例を複数の宅地に適用する場合、次の算式によって適用対象面積の調整が行われます。
A+B×5/3+C×2≦400㎡
A・・・特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等に該当する部分の合計面積
B・・・特定居住用宅地等に該当する部分の合計面積
C・・・貸付事業用宅地等に該当する部分の合計面積
2.適用要件
この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に、この特例の適用を受ける旨の記載及び計算
に関する明細書その他一定の書類を添付する必要があります。
なお、この特例は、相続税の申告期限までに相続人等によって分割されていない宅地等については、
適用を受けられません。ただし、申告期限までに分割されていない宅地等が、次のいずれかに該当す
ることとなったときには、適用を受けることができます。
・申告期限後3年以内に分割された場合
・期限後3年以内に分割できないことについてやむを得ない事情があり、所轄税務署長の承認を受け
た場合、分割できることとなった日として定められた一定の日から4ヶ月以内に分割されたとき