‘法定相続分’

Q.配偶者の税額の軽減というのは、どのような制度でしょうか?

 

A.配偶者が相続財産のうち正味財産額1億6,000万円か法定相続分のいずれか多い金額まで相続財産を取得した場合、その配偶者に相続税は課されません。仮に、夫・妻・子という家族構成であるとします。この場合に夫が死去したら、妻の法定相続分は2分の1となり、妻は相続財産の2分の1を相続したとしても、納付税額はゼロとなります。
妻は夫の財産形成に半分貢献したとみなされますので、相続税について妻は優遇されているのです。

配偶者の税額の軽減の適用を受けることができる財産は、相続税の申告期限までに遺産分割等によって実際に配偶者が取得したものに限定されるのが原則です。ただし、申告期限までに遺産分割がなされなかった財産についても、申告期限より原則として3年以内に分割した場合は、適用を受けることが可能です。

なお、相続財産の一部か全部を、仮装隠ぺいによって申告しているか申告していなかった場合に、その後の税務調査においてその事実が明らかとなり、修正申告か期限後申告を行うことになったときは、その仮装隠ぺいされていた財産についてはこの制度の対象となりません。

Q.相続税の申告期限までに遺産分割を行うことによる税務上のメリットは、何かありますか?

 

A.遺産分割に期限が設けられているわけではありませんが、相続税の申告期限まで(相続開始後10ヶ月以内)に遺産分割を行い、税務上のメリットを活かしましょう。税制上のメリットとして、以下のような制度を挙げることができます。

1.配偶者の税額の軽減
配偶者が相続財産のうち、正味財産額1億6,000万円までか法定相続分(2分の1)までの相続財産を取得した場合、その配偶者に相続税は課されません。
ただし、仮装隠ぺいにより申告しなかった財産について、後日、税務調査によって修正申告を行うことになったら、その仮装隠ぺいされた財産はこの制度の対象とはならないということに、留意が必要です。

2.小規模宅地等の特例
居住の用か事業の用に供している宅地等を相続した場合、一定の選択をしたもので一定の面積までの部分については、次の減額割合を乗じて算出した金額を評価減として、通常の方法によって評価した価額より差し引くことができます。
・特定居住用宅地等に該当すれば240㎡まで80%(平成27年1月1日以降に相続か遺贈によって取得する財産に係る相続税については330㎡まで)
・特定事業用宅地等や特定同族会社事業用宅地等に該当すれば400㎡まで80%
・貸付事業用宅地等に該当すれば200㎡まで50%

3.農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例
農業を営んでいた被相続人より一定の農地等を相続や遺贈により取得した相続人が、その農地等で農業を継続する場合は、一定の条件の下にその農地等の価額のうち農業投資価格による価額を超える部分に対応する相続税額は、納税が猶予されます。
その後、この納税猶予税額は、次のどれかに当てはまることになったときに免除されます。
・農業相続人が相続税の申告書の提出期限より農業を20年間継続した場合(市街化区域内農地等に対応する農地等納税猶予税額の部分に限定されます)
・農業相続人がこの特例の適用を受ける農地等の全部を農業後継者に生前一括贈与し、その贈与税につき納税猶予の特例を受ける場合
・農業相続人が死去した場合

Q.相続開始後に税の負担を軽くするためにできる対策は、何かありますか?

 

A.相続開始後に税負担を軽減するためにできることを以下に述べます。

1.配偶者の税額の軽減を利用する
配偶者の税額の軽減というのは、被相続人の民法上の配偶者(内縁関係の人は対象外です)が取得した財産は、1億6,000万円と法定相続分のどちらか多額の金額までは、相続税がかからないという制度です。配偶者への優遇措置が設けられているのです。

2.二次相続まで考慮して遺産分割を行う
配偶者は預金と自宅をメインに相続します。相続した預金を毎年110万円ずつ贈与することも可能であり、そのように贈与を行うことで二次相続発生時における配偶者の財産が減少します。

3.分割の仕方によって土地の評価が低くなる
土地は、所有かつ利用により評価を行いますので、分割の仕方によって評価額を引き下げることが可能です。ただし、土地の有効活用が図られていない場合には不合理分割の認定を受けることがあります。
例えば、兄と弟で半分ずつ共有相続するより、二つに分割して相続する方が、大幅に土地の評価額が低くなるケースもあります。

4.小規模宅地等の特例の適用を受けた土地は子が相続する
居住用宅地につき240㎡まで(平成27年1月1日以降に相続か遺贈によって取得する財産に係る相続税については330㎡まで)、事業用宅地につき400㎡まで80%の評価減を、貸地等につき200㎡まで50%の評価減を受けることができます。配偶者が相続財産の半分までは課税されないことから、配偶者がこの小規模宅地を相続した場合には、評価減の効果が半減することになってしまいます。したがって、小規模宅地等の特例の適用を受けることができる子が、その土地を相続するといいと思われます。

5.売却予定の不動産は共有で相続する
居住用財産を売った場合には、譲渡所得より3,000万円まで控除ができる特例が存在します。
例えば、母と息子の2人の共有名義で相続しかつ同居している自宅を売ったのであれば、上記の3,000万円控除を母と息子がそれぞれ利用できます。それゆえ、譲渡所得は2人で計6,000万円まで非課税とされます。相続税申告期限後に売却を行いましょう。

6.相続税が取得費に加算される特例を利用する
相続によって取得した財産を、相続税の申告期限の翌日以降3年を経過する日までに譲渡した場合、譲渡税が軽減されることがあります。

預金の払い戻しと配偶者の税額軽減についてが、わかりません。

 

<解答>
実際には、払い戻しを受けているため、「分割された財産」として「配偶者の税額軽減」の適用があるだろう(平成12.6.30裁決より)。

<解説>
(1) 法定の取り扱い
遺産については、遺言や遺産分割により、関係者や相続人に分配されるのが原則となる。ただし、預金などの可分債権においては、分割されていなかったとしても相続人が法定相続分に応じて、取得する権利が存在している。つまり、分割を行っていないとしても取得する権利が存在しているため、分割の対象から除かれるということになる。この考え方については昭和29.4.8、昭和34.6.19の最高裁判所の判決によるものになっている。
しかし、家庭裁判所の遺産分割審判においては、上記の最高裁判決を踏まえた上で、可分債権も遺産分割の対象になる取り扱いが定着していることになるため、判断は分かれるだろう。
つまり、預金などの可分債権については、最高裁判所におきましては遺産分割の対象とはならないけれども、家庭裁判所の遺産分割審判におきましては遺産分割の対象になるといえる。

(2) 配偶者の税額軽減の取り扱い
配偶者の税額軽減(相続税法19条の2)は、「分割されてはいない財産」には適用されることはない。では、分割されていない預金については、配偶者の税額軽減の対象にはなるのだろうか?
(1)にあるように可分債権については、最高裁判所と家庭裁判所で取り扱いが異なることになる。そのため、可分債権であることを理由に、この預金が「分割されていない財産」が除かれるとされることには無理があるだろう。
しかし、本問の場合においては、分割は行われていないようだが、配偶者については実際に法定相続分の預金の払い戻しを受けている。配偶者については払い戻しを受けたことにより、その預金の払い戻しを受けている。配偶者については、払い戻しを受けたことによって、その預金の実質的な支配者になる。ですから「分割された財産」と同じ効力を持つことになる。そのため、この預金については「分割されていない財産」から除かれることになり、分割された財産として配偶者の税額軽減の適用を受けることが可能になる。

次に配偶者の税額軽減の適用時期を考えてみる。申告期限前に払い戻しを受けた場合においては、通常どおり配偶者の税額軽減を適用しまして、相続税の申告を行うことになるだろう。申告期限後に払い戻しを受けた場合については、払い戻しを受けた日から4ヶ月以内に行う更正の請求によって、配偶者の税額軽減を適用することになり、税額を取り戻すことが可能になる。ただし、申告期限から3年を経過した日以後においては、配偶者の税額軽減の適用自体がなくなることになるため、注意が必要になる(訴訟があった場合などは除かれることになる。)。

失踪宣告について、説明してください。

 

<解答>
生死が不明の者がいる場合におきましては、その利害関係者が家庭裁判所に「失踪宣告」の申し立てをすることができるでしょう。失踪宣告が家庭裁判所からなされますと、戸籍上、行方不明者は死亡したことになります。

<解説>
(1) 民法においての手続き
生死不明の者が存在している場合におきましては、その者の推定相続人等、利害関係者が家庭裁判所に対して失踪宣告を求める申し立てをすることが可能になるでしょう。申し立てがあった場合におきましては、家庭裁判所は、一定期間(普通失踪においては6ヶ月以上、特別失踪においては2ヶ月以上)官報などで公告することになりまして、本人、もしくは生存を知っている者から届出がなかった場合においては、失踪宣告を行うことになるでしょう(民法30条)。この手続きによりまして、生死が不明の者については死亡したことが確定し、戸籍から抹消されることになるようです。

(2) 生死が不明の者とは
失踪宣告の対象になります行方不明者につきましては、2つの種類に区分されることになるでしょう。
1つは、「普通失踪」といいまして、7年間、生死が不明である場合におきまして、7年間を満了した場合においては、死亡したものとみなされます。
もう1つについては、「特別失踪」といいまして、船舶・戦争の沈没・天災ほか危難が及んだ以降に、生死が、1年間不明である場合におきましては、危難が去ったときに死亡したものとみなされることになるでしょう(民法31条)。

(3) 相続税の申告
失踪宣告が、家庭裁判所から出されますと、死亡したとみなされる日に、相続が開始されることになるため、相続税の申告をしなければなりません。
この場合におきまして、法定相続人は、失踪宣告が出されたときではなく、死亡とみなされたときで、判定することになってしまうため、相続税の税額計算・基礎控除などにつきましても、失踪宣告によって死亡とみなされた日時点の法定相続人の数、そして法定相続分によりまして計算することになるでしょう。相続税の申告期限については、一般的には、死亡を知った日から10ヶ月以内になるようですが、失踪宣告がなされた場合につきましては、失踪宣告がなされたことを知った日から10ヶ月以内になります。

(4) 相続人のうちに生死不明の者が存在した場合
生死が、被相続人の相続人のうちに不明の者が存在した場合におきましては、被相続人の遺産分割が不可能になってしまうことになるため、その行方不明者の代理人としまして、財産管理人選任の申し立てを家庭裁判所に行う必要があるでしょう。その代わりに、その行方不明の相続人につきましては、失踪宣告の申し立て手続きをすることも可能になるでしょう。
この場合において、失踪宣告によって死亡とみなされることになった日が、被相続人の死亡日より以前になれば、被相続人の法定相続人から外れることになるでしょう。同じく、被相続人の相続税の基礎控除・税額計算においても、法定相続人の数から除外されることになるでしょう。

(5) 失踪宣告の取り消し
失踪宣告の後に、実は生存していた、もしくは死亡時が違うことが証明された場合におきましては、本人、もしくは利害関係者が家庭裁判所に請求することによりまして、失踪宣告が取り消されることになるでしょう。この手続きによって、戸籍が元に戻るか、あるいは戸籍上の死亡日が修正されることになります(民法32条)。
ここで、すでに受取っていた財産が存在した場合においてはどうなると考えられるのでしょうか?原則として、失踪宣告によりまして受取っていた財産については、現に利益を受けている部分のみ返還すればよいでしょう。受取っていた財産につきましては、なされた契約等も、善意で行ったとされる場合については、遡りまして契約が無効になることもないことを覚えておくべきでしょう。
また、戸籍上の死亡日が修正になった場合におきましては、相続人が変わるケースも考えられます。相続人でなくなった者については、新たに相続人になった者に対し、現に利益を受けている部分を返還することになります。

適正な遺留分減殺について、説明してください。

 

<解答>
相続人の間の合意がとれて、寄与分などを考慮した結果、3億円となったのであれば、差額の5000万円については贈与税はかかることはないと考えられます。

<解説>
(1) 遺留分減殺請求
相続人であります子供たちに全部の財産を相続させるとの遺言が存在した場合において、相続人であるほかの子供たちにつきましては、最低限度の生活保障を行うといった観点から考え、法定相続分の1/2の遺留分という権利が認められており、法定相続分の1/2までについては、相続財産を返却してもらうことが可能になるようです。この場合において、遺留分減殺請求を行う子供と遺言の指定があった子供とは、経済的に、対立した関係にあるといえるかもしれません。単純にこの場合において、その相続時の財産額だけではなく、被相続人の財産維持などに貢献してきた人の寄与分が問題となるケースが存在しているようです。

(2) 寄与分
この寄与分とは、1980年民法改正によって、明文化されものでありまして、共同相続人の中に、被相続人の財産維持、あるいは増加につきまして特別に寄与した者が存在している場合については、相続分とは他に寄与分としまして、その相続人に取得させることとしたものになります。
実務においては、相続開始のときにおきまして、被相続人が所有していた財産の価額から共同相続人の協議で定めました、その者の寄与分を控除したものを相続財産とみなします。そして、法定相続分によって、算定を行った相続分に寄与分を加えた額をもちまして、その者の相続分とする取り扱いになります。

(3) 遺留分における相続税実務
厳密にいうと、遺留分相当額を取得するべきと考えられることになりますので、多すぎても少なすぎても、贈与税の問題が生じるとも考えられます。
しかし、経済的に対立関係にあります、当事者同士でお互いに贈与するという認識がまず存在しません。また、民法においての法定相続分についても、遺産分割までの潜在的な被相続人からの権利の取得の割合を定めたものであり、遺産分割協議によりまして、この法定相続分と違う分割割合となったとしましても、贈与税の課税はないことに留意しなければならないでしょう。
このケースにおいては、寄与分を考慮し、3億円の不動産を取得したことになるようですが、実際には遺留分減殺の請求事案におきましては、その価額を厳密に考えまして、価額弁償金等を決めまして分割するケースは少ないといえるかもしれません。

遺産分割において、遺言が有効に働くと耳にしましたが、どのような点で有効だと考えられているのでしょうか?

 

<解答>
死後におけるご自身の財産の処分を、奥様・お子様などの残された方に対して伝えるとともに、その実現を図ろうとするものが、遺言になります。遺言書がない場合については、相続人同士の遺産分割協議によって相続財産を分けることになってしまうため、争いが生じやすくなっているようです。協議がまとまらないことになってしまえば、いつまでたっても相続財産を分けることが不可能になってしまうでしょう。遺言は、このような相続人の間の争いを防ぐことが可能になるため、遺産分割に有効であると断言できるでしょう。

<解説>
(1) 遺言のメリット
相続におきまして、最も優先されることになるものについては、亡くなられた方のご意思となります。その亡くなられた方の意思を表したものが遺言となるでしょう。遺言については、遺産の具体的な配分方法の指定を亡くなられた方が可能となるため、遺産分割協議のトラブルを事前に防止することが可能となるでしょう。
また、遺産の配分方法以外にも、ご家族に対する考えや想いについても伝えてその実現を図ることが可能になると思われます。
さらに、遺言によって相続人以外の方に対しても財産を遺すことが可能となるでしょう。

(2) 遺言の必要な方
特に次のような方につきましては、遺言書を作成することがお勧めできますので、覚えておくと良いでしょう。

(一) 子供のいない夫婦
お子様のいない夫婦の相続人につきましては、お二人のご両親がすでに亡くなっている場合には、配偶者と兄弟姉妹になってしまうようです。したがいまして、夫が妻にすべての財産を遺したいと思われていたとしましても、遺言書がない場合については、兄弟姉妹についても夫の財産を相続する権利が生じてしまうことになってしまいます。兄弟姉妹がその権利を主張することになってしまいまして、遺産分割協議書に印鑑を押さない場合につきましては、妻は、夫の金融資産の名義変更や、ご自宅の相続登記さえ、行うことが不可能になってしまうことに留意すべきでしょう。兄弟姉妹と仲がよくなったとしても、相続がおきると揉めてしまうケースが多々存在しているでしょう。遺言書は残された奥様にも、そのような苦労をかけないためにも、作成した方がよいと考えられるでしょう。

(二) 相続人がいない方
配偶者、お子様、兄弟姉妹などの相続人が存在していない方につきましては、遺言書が存在していない場合に関しましても、相続財産は最終的に国に帰属することになってしまいます。もし生前に遺言書を作成することになれば、ご自身が相続後の財産の処分方法を定めることが可能となります。例えば、遺言書で指定することによって、○△協会、○×財団、学校法人などの公的な団体や法人に、ご自身の死亡後に財産をどのように遺したいのかをじっくりと考えまして、遺言書を作成することになるのがベストな選択となるでしょう。

(三) 相続人以外の方に財産を遺したい方
遺言書を作成することによりまして、相続人以外の方に財産を遺すことが可能となるでしょう。もし遺言書が存在しなければ、法定相続人で相続することになりますので、相続人以外の方が財産を相続することが不可能になってしまいます。例えば、長男のお嫁さんが生前に面倒をよくみてくれていたこともあり、長男のお嫁さんに財産を遺しておきたいと考えていたと仮定したとします。相続する権利は存在していませんが、遺言書によって長男のお嫁さんに対して財産を遺す旨を指定することで、お嫁さんも財産を相続する権利が生じることになってしまうことになります。内縁の妻に対して財産を遺したい場合も遺言書が必要になると考えられます。

(四) 相続人同士が揉めそうな方
相続人同士の仲が悪くなってしまって、将来遺産分割で揉めそうな方、もしくは、相続財産の多くが不動産で遺産分割が難しい方につきましては、生前に遺言書を作成することによって、相続人同士が遺産分割で揉めるのを防ぐことが可能となります。例えば、相続人が長男、次男、三男の3人で、相続財産が賃貸物件だと仮定します。賃貸物件を3人で、相続財産を分けなければなりません。賃貸物件を3人共有で相続した場合におきまして、3人の署名・押印がなければ、その物件を売却することも、その物件を担保にローンを組むことも不可能になってしまうでしょう。このような将来のもめ事を避けるためにも、生前に遺言書を作成することにしまして、「賃貸物件については長男に相続させ、長男は次男と三男に現金○○円を支払う(代償分割※)」と指定することができれば、賃貸物件を共有で相続するという事態を避けることが可能になることを留意すべきでしょう。

※ 代償分割・・・相続人の1人が相続によって財産の現物を取得する一方、他の相続人に取得した財産に相当している債務を負担する遺産分割の方法をいうことになります。

(3) 遺言書を作成する上でのポイント
遺言書を作成する上でのポイントについては、以下の4点となるでしょう。
1、 遺留分を考慮した遺言書であること。
2、 相続税を考慮した遺言書であること。
3、 有効性のある遺言書であること。
4、 遺言書は何度でも書き直しが可能であること。

1、 遺留分を考慮してある遺言書であること。
遺留分とは、民法で定められた相続人の相続が可能となる最低限の保障割合ということになります。基本的には、法定相続分の半分になるでしょう。なお、兄弟姉妹については遺留分は存在していないことに留意しなければなりません。
この遺留分を侵害してしまって、遺言書を作成した場合につきましては、遺留分を有している相続人が、自分の遺留分に対する不足分の取り戻し請求、つまり「遺留分減殺請求」をすることが可能となるでしょう。もし、全ての財産を特定の者に相続させるという遺言を書いた場合につきまして、他の相続人から「遺留分減殺請求」をされることによって、その遺留分に相当する財産をその相続人に返還しなければならないでしょう。
せっかく作成することにした遺言書によって、相続人同士の争いが生じてしまっては、元も子もなくなってしまいます。
遺留分を考慮した遺言書を作成するべきでしょう。

2、 相続税を考慮した遺言書であること。
相続税を考慮した遺言書であるということは、イ)相続税法上の有利な特典をしっかりと活用できているか、ロ)納税を考慮した分割内用になっているか、ということになります。

1) 相続税法上の有利な特典を活かしているのか。
相続税法上の有利な特典で主になってくるのは、「配偶者の税額軽減」と「小規模宅地等の減額の特例」となるでしょう。「配偶者の税額軽減」とは、配偶者が相続を行った財産については、一定割合まで非課税となるものとなります。「小規模宅地等の税額の特例」とは、亡くなられた方が居住用、もしくは事業用としまして利用していた土地を相続した相続人が一定の要件を満たすことができれば、土地の相続税評価額の80パーセント(一定の限度あり)を減額することが可能であるというものになるでしょう。
このような特典をフルに活用することができるような遺産分割方法を遺言書で指定することも相続税を考えたうえでは重要となるでしょう。

2) 納税を考慮した分割内容になっているのか。
遺言書を作成しているご自身の意思を尊重したものであるべきであると考えられますが、相続税の納付という観点にも注意を払いながら、遺言書を作成しなければならないでしょう。
例えば、ある相続人の相続財産が土地のみであった場合につきましては、相続税の納付が不可能になってしまう可能性があります。相続人に対して資力がある場合につきましては問題になることはありませんが、納税するだけの資金がない場合につきましては、相続を行った土地を売却することにして納税資金を捻出しなければならないことになります。そのようなケースを避ける目的のためにも、納税額相当の現金を相続人に分けるように金融資産のバランスを考慮した遺言書を作成しなければならないと考えられるでしょう。場合によりましては、物納も考えた遺言書を作成することも検討すべきだと考えられます。

3、 有効性のある遺言書であること。
遺言書を作成したとしても、不備があれば無効となってしまいまして、法律上の効力をもたないことになります。遺言書を作成するにあたっては、きちんとした手続きを踏みまして、作成する必要があると考えられるでしょう。
遺言書については、「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2つの形式が多く用いられることになります。自筆証書遺言とは、作成は簡便なものとなりますが、不備によっては無効となりやすくなり、公証人が公正証書としまして作成する公正証書遺言の方が確実であると考えられます。また、公正証書遺言につきましては、公証役場で保管されることになるため、紛失のおそれも心配する必要もありません、遺言書を作成することになるのならば、より確実性の高い公正証書遺言をお勧めいたします。

4、 遺言書は何度でも書き直しが可能であること。
遺言書には、有効期限が存在していないことに留意しなければなりません。何度でも作り直すことが可能でなければなりません。また複数の遺言書が存在する場合につきましては、最新の遺言書が有効となることに留意しましょう。
財産の内容や財産の評価額につきましては毎年変化することになりますので、遺言書の的的な見直しが必要だと考えられます。遺言書を定期的に見直さなかったために、後々思わぬトラブルが生じることも考えられてしまいます。
遺言書は何度でも書き直しが可能でありますため、気軽に作成して、定期的に遺言書の内容をメンテナンスすべきだと考えられます。

※ 公正証書遺言と自筆証書遺言との比較
・公正証書遺言
場所:公証人役場。
証人:2人以上。
作成方法:本人が口述し、公証人が筆記。(戸籍謄本等の一定の書類が必要となる。)
署名押印:本人、公証人、証人。
裁判所の検認手続き:不要。
メリット
・ 偽造の危険性がない。
・ 検認手続きが不要である。
・ 証拠能力が高い。
デメリット
・ 遺言内容を秘密にできない。
・ 費用がかかってしまう。
・ 作成手順が煩雑である。

自筆証書遺言
場所:自由。
証人:不要である。
作成方法:本人が自筆し、署名押印する。
署名押印:本人のみ。
裁判所の検認手続き:必要である。
メリット
・ 遺言内容を秘密にできる。
・ 費用がかからない。
・ 証人不要。
デメリット
・ 検認手続きが必要である。
・ 要式欠如による無効がある。
・ 紛失、偽造の可能性がある。

法定相続人や法定相続分について教えてください。

 

民法において相続人となれる者の範囲や相続順位が規定されていて、この民法の規定によって相続人となる者を法定相続人と呼びます。第1順位は配偶者と子、第2順位は配偶者と直系尊属、第3順位は配偶者と兄弟姉妹となっています。
また、民法において基本的な財産の分配割合が規定されています。これは法定相続分と呼ばれ、遺言等による相続分の指定がない場合における共同相続人の相続分となります。相続人の構成が配偶者と子である場合、法定相続分は配偶者が2分の1、子が2分の1です。配偶者と直系尊属である場合、配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1です。配偶者と兄弟姉妹である場合、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人いる場合、相続分は各々均分となります。相続人が妻だけである場合、妻の相続分は全額です。

遺留分について教えてください。

 

遺留分というのは、民法において規定された、遺産につき兄弟姉妹以外の相続人に最低保障される権利のことです。

民法においては、法定相続分という基本的な財産の分配割合が規定されているほか、遺留分に関しても定められています。遺留分の割合は、基本的には法定相続分の2分の1とされています。
・相続人が配偶者だけである場合、配偶者の法定相続分は1、遺留分は2分の1となります。
・相続人が配偶者と子供である場合、法定相続分は配偶者が2分の1、子供が2分の1となり、遺留分は配偶者が4分の1、子供が4分の1となります。
・相続人が配偶者と父母である場合、法定相続分は配偶者が3分の2、父母が3分の1となり、遺留分は配偶者が3分の1、父母が6分の1となります。
・相続人が配偶者と兄弟姉妹である場合、法定相続分は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1となり、遺留分は配偶者が2分の1となります(兄弟姉妹には遺留分はありません)。
・相続人が父母だけである場合、父母の法定相続分は1、遺留分は3分の1となります。

被相続人の財産の額が基礎控除額を上回る場合においても、特例を用いると相続税が課されないことがあるのですか?

 

このような場合でも、特例を用いると相続税が課されないことがあります。以下に、典型例を述べます。

1.配偶者の税額軽減の特例の適用を受ける場合
被相続人の財産の額が基礎控除額を上回る場合においても、被相続人の配偶者は、相続財産の金額のうちで次のどちらか多い方の金額までは相続税が課されません(ただし、配偶者の税額軽減の特例の適用を受けるためには、申告が必要です)。
・1億6,000万円
法定相続分

2.小規模宅地等の特例の適用を受ける場合
一定の条件に当てはまれば被相続人の自宅の敷地の評価額を80%減額できる等、土地については小規模宅地等の特例という優遇税制が存在します。被相続人の財産の額が基礎控除額を上回る場合においても、この特例の適用を受けることによって基礎控除額以下となれば、相続税が課されません(ただし、小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、申告が必要です)。

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