‘事業用宅地’

Q.相続税の申告期限までに遺産分割を行うことによる税務上のメリットは、何かありますか?

 

A.遺産分割に期限が設けられているわけではありませんが、相続税の申告期限まで(相続開始後10ヶ月以内)に遺産分割を行い、税務上のメリットを活かしましょう。税制上のメリットとして、以下のような制度を挙げることができます。

1.配偶者の税額の軽減
配偶者が相続財産のうち、正味財産額1億6,000万円までか法定相続分(2分の1)までの相続財産を取得した場合、その配偶者に相続税は課されません。
ただし、仮装隠ぺいにより申告しなかった財産について、後日、税務調査によって修正申告を行うことになったら、その仮装隠ぺいされた財産はこの制度の対象とはならないということに、留意が必要です。

2.小規模宅地等の特例
居住の用か事業の用に供している宅地等を相続した場合、一定の選択をしたもので一定の面積までの部分については、次の減額割合を乗じて算出した金額を評価減として、通常の方法によって評価した価額より差し引くことができます。
・特定居住用宅地等に該当すれば240㎡まで80%(平成27年1月1日以降に相続か遺贈によって取得する財産に係る相続税については330㎡まで)
・特定事業用宅地等や特定同族会社事業用宅地等に該当すれば400㎡まで80%
・貸付事業用宅地等に該当すれば200㎡まで50%

3.農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例
農業を営んでいた被相続人より一定の農地等を相続や遺贈により取得した相続人が、その農地等で農業を継続する場合は、一定の条件の下にその農地等の価額のうち農業投資価格による価額を超える部分に対応する相続税額は、納税が猶予されます。
その後、この納税猶予税額は、次のどれかに当てはまることになったときに免除されます。
・農業相続人が相続税の申告書の提出期限より農業を20年間継続した場合(市街化区域内農地等に対応する農地等納税猶予税額の部分に限定されます)
・農業相続人がこの特例の適用を受ける農地等の全部を農業後継者に生前一括贈与し、その贈与税につき納税猶予の特例を受ける場合
・農業相続人が死去した場合

Q.相続開始後に税の負担を軽くするためにできる対策は、何かありますか?

 

A.相続開始後に税負担を軽減するためにできることを以下に述べます。

1.配偶者の税額の軽減を利用する
配偶者の税額の軽減というのは、被相続人の民法上の配偶者(内縁関係の人は対象外です)が取得した財産は、1億6,000万円と法定相続分のどちらか多額の金額までは、相続税がかからないという制度です。配偶者への優遇措置が設けられているのです。

2.二次相続まで考慮して遺産分割を行う
配偶者は預金と自宅をメインに相続します。相続した預金を毎年110万円ずつ贈与することも可能であり、そのように贈与を行うことで二次相続発生時における配偶者の財産が減少します。

3.分割の仕方によって土地の評価が低くなる
土地は、所有かつ利用により評価を行いますので、分割の仕方によって評価額を引き下げることが可能です。ただし、土地の有効活用が図られていない場合には不合理分割の認定を受けることがあります。
例えば、兄と弟で半分ずつ共有相続するより、二つに分割して相続する方が、大幅に土地の評価額が低くなるケースもあります。

4.小規模宅地等の特例の適用を受けた土地は子が相続する
居住用宅地につき240㎡まで(平成27年1月1日以降に相続か遺贈によって取得する財産に係る相続税については330㎡まで)、事業用宅地につき400㎡まで80%の評価減を、貸地等につき200㎡まで50%の評価減を受けることができます。配偶者が相続財産の半分までは課税されないことから、配偶者がこの小規模宅地を相続した場合には、評価減の効果が半減することになってしまいます。したがって、小規模宅地等の特例の適用を受けることができる子が、その土地を相続するといいと思われます。

5.売却予定の不動産は共有で相続する
居住用財産を売った場合には、譲渡所得より3,000万円まで控除ができる特例が存在します。
例えば、母と息子の2人の共有名義で相続しかつ同居している自宅を売ったのであれば、上記の3,000万円控除を母と息子がそれぞれ利用できます。それゆえ、譲渡所得は2人で計6,000万円まで非課税とされます。相続税申告期限後に売却を行いましょう。

6.相続税が取得費に加算される特例を利用する
相続によって取得した財産を、相続税の申告期限の翌日以降3年を経過する日までに譲渡した場合、譲渡税が軽減されることがあります。

Q.将来の相続に向けて生前にできる対策は、何かありますか?

 

A.将来の相続に向けて相続開始前にできることを以下に述べます。

1.暦年課税贈与で相続財産より分離する
110万円の基礎控除を活用し、毎年手堅く子に贈与していくといいでしょう。暦年課税贈与については、贈与者が死去した際に相続税を算出するに当たり、原則として贈与財産の価額を相続財産の価額に加算する必要はありません。
ちなみに、相続時精算課税贈与の場合は、特別控除額は2,500万円ですが、贈与財産は贈与時の価額で相続税の課税財産に算入されることになります。

2.暦年課税贈与の配偶者控除を利用して自宅を贈与する
婚姻期間が20年以上である場合において、夫婦間で居住用不動産か居住用不動産を取得するための金銭の贈与がなされたときには、基礎控除(110万円)に加えて配偶者控除(2,000万円)の適用を受けることができます。

3.収益物件を贈与する
家賃収入を得られる建物を贈与した場合には、家賃が子の収入となります。なお、贈与するのは建物のみで構わず、敷地を贈与しなければならないわけではありません。
贈与金額は、固定資産税評価額の70%となり、固定資産税納税通知書で確認することが可能です。
・贈与金額が少額となるのであれば、暦年課税贈与を行います。
・贈与金額が多額となるのであれば、精算課税贈与を行います(将来相続財産に合算されるものの、相続開始までの家賃を子に帰属させることが可能です)。
・上記のいずれでもないのであれば、複数年に分けて暦年課税贈与(共有持分の贈与)を行います。

4.退職金支給で評価を下げて自社株を贈与する
オーナー社長の引退や老齢で相続の時期が近づいている場合には、多額の退職金を社長に支給して大幅に利益を圧縮し、自社株式の評価額を引き下げます。株価が下がったところで、相続時精算課税制度を用いて後継者に贈与します。

5.小規模宅地等の特例の適用要件を確認する
小規模宅地等の特例というのは、居住用宅地につき240㎡まで(平成27年1月1日以降に相続か遺贈によって取得する財産に係る相続税については330㎡まで)、事業用宅地につき400㎡まで80%の評価減を、貸地等につき200㎡まで50%の評価減を受けることができるという制度です。
相続開始前に、上記の特例の適用要件を満たしておくといいでしょう。

6.孫を養子にする
養子が一人増えたら、基礎控除が1,000万円(平成27年1月1日以降に相続か遺贈によって取得する財産に係る相続税については600万円)増加するほか、適用税率が下がることがあります。そして、養子にしても相続財産を分配しなければならないわけではありません。法定相続人の数を増やすことに意義があるのです(法定相続人の数に含める養子の数は、一定の人数までとされています)。
また、孫を養子にした場合、相続税を1代飛ばすことができるというメリットもあります。
なお、孫を養子にした場合のデメリットは、孫の相続税額が2割加算となることです。

7.預金ではなく生命保険で残す
生命保険金は指定した受取人の固有の財産ですので遺産分割の対象とはならず、確実に受取人のものとなります。さらに、生命保険金は、500万円に法定相続人の数を乗じた額まで非課税とされています。

8.会社分割で円滑に事業承継を行う
後継者が2人存在する場合には、生前に会社を分割し、兄弟でトラブルになることにないようにしましょう。
例えば、創業者がA社の株を100%有していて、A社はa事業とb事業を行っている場合、按分型の新設分割によってB社を設立し、B社にb事業を移します。この時点でA社とB社の株を100%有している創業者は、両者の経営を見つつ、生前贈与、親子間譲渡、遺言によって、A社株式を長男に、B社株式を次男に取得させます。

9.物納の条件整備をしておく
(1)測量等を行っておく
物納申請のためでも、相続発生後に要した測量費用、境界確認費用等に、相続税の債務控除は適用されません。相続が発生する前に行っておくと、相続財産がその費用分減少しますので、相続税の負担もその分軽減されます。
(2)隣地の人と仲良くしておく
物納時には、隣地の人より境界確認の印をもらうことになりますので、隣地の人々とは日頃より良好な関係を築いておくことが重要です。

被相続人がオーナーとなっていた会社の建物の敷地となっている土地を相続しました。何か特例が適用されますか?

 

小規模宅地等の特例により、面積400㎡まで相続評価額を80%減額できます。

1.小規模宅地等(特定同族会社事業用)
(1)概要
事業の用に供している宅地等を相続すると、一定の面積(小規模宅地等)については、通常の方法で評価した価額から次に掲げる面積について次の減額割合を乗じて計算した金額を評価減として控除することができます。
特定同族会社事業用宅地等   400㎡まで  80%

(2)特定同族会社事業用宅地
特定同族会社事業用宅地等とは、相続開始直前から相続税の申告期限まで次のイの要件に該当する法人の事業の用に供されていた宅地等で、その宅地等の取得者のうち次のロの要件の全てに該当する被相続人の親族がいるものをいいます。
イ.相続開始直前において、被相続人及び被相続人の親族等が株式・出資の50%超を有する法人であること。
ロ.相続税の申告期限において、上記イの法人の役員であること。かつ、その宅地等を相続税の申告期限まで保有していること。

(3)特定同族会社の事業の用に供されていた宅地等の範囲
被相続人の有する宅地等の上に特定同族会社の所有する建物等があって、当該特定同族会社が事業(不動産貸付業を除きます)を行っている場合、相当の地代を支払っているときには80%減額となりますが、無償(使用賃借)のときには減額なしとなります。
なお、特定同族会社が不動産貸付業等を行っている場合は、貸付事業用宅地等に該当し、200㎡まで50%減額となります。

(4)土地が複数ある場合
小規模宅地等の特例を複数の宅地に適用する場合、次の算式によって適用対象面積の調整が行われます。
A+B×5/3+C×2≦400㎡
A・・・特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等に該当する部分の合計面積
B・・・特定居住用宅地等に該当する部分の合計面積
C・・・貸付事業用宅地等に該当する部分の合計面積

2.適用要件
この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に、この特例の適用を受ける旨の記載及び計算
に関する明細書その他一定の書類を添付する必要があります。
なお、この特例は、相続税の申告期限までに相続人等によって分割されていない宅地等については、
適用を受けられません。ただし、申告期限までに分割されていない宅地等が、次のいずれかに該当す
ることとなったときには、適用を受けることができます。
・申告期限後3年以内に分割された場合
・期限後3年以内に分割できないことについてやむを得ない事情があり、所轄税務署長の承認を受け
た場合、分割できることとなった日として定められた一定の日から4ヶ月以内に分割されたとき

配偶者が現在、居住している家とその敷地になっている土地を、配偶者が相続しました。何か特典はありますか?

 

小規模宅地等の特例により、面積240㎡まで相続税評価額を80%減額できます。

1.小規模宅地等(特定居住用)
(1)概要
居住の用に供している宅地等を相続すると、一定の面積(小規模宅地等)について、要件を満たせば、通常の方法で評価した価額から次に掲げる面積について次の減額割合を乗じて計算した金額を評価減として控除することができます。
特定居住用宅地等   240㎡まで  80%

(2)特定居住用宅地
特定居住用宅地等とは、被相続人等の居住の用に供されていた宅地で、取得者の中に「配偶者」、又は次のいずれかの要件を満たす「親族」がいる場合のものをいいます。
イ.同居親族で継続して居住している。
ロ.被相続人に配偶者又は同居親族がない場合に、3年以内に居住用の持家がなく、同居していない親族。
ハ.生計が一で、相続開始前から居住。
上記の要件を満たした親族が、当該宅地等を申告期限まで引き続き所有し、かつ申告期限まで引き続き居住している(ロのケースは除きます)場合に限り、80%減額の適用を受けることができます。
なお、平成22年3月31日までの相続又は遺贈については、取得者のうちの1人が上記要件を満たしていれば、全員が80%評価減の適用を受けることができました。しかし、改正によって、要件を満たす者以外の者は適用を受けられないこととなりました。
また、1棟の居住用併用建物についても、改正が行われました。平成22年3月31日までの相続又は遺贈については、1棟の建物の中に特定居住用部分と他の用途部分がある場合に、按分する必要はなく、全てが特定居住用として扱われます。したがって、例えば、全部が貸付用なら50%の評価減となりますが、一部分でも特定居住用なら240㎡までの部分ですが全体が80%の評価減となります。しかし、改正後の平成22年4月1日以降は、1棟の建物の敷地に特定居住用とそれ以外の利用があるなら、利用区分ごとに小規模宅地の判定を行うこととなりました。

(3)土地が複数ある場合
小規模宅地等の特例を複数の宅地に適用する場合、次の算式によって適用対象面積の調整が行われます。
A+B×5/3+C×2≦400㎡
A・・・特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等に該当する部分の合計面積
B・・・特定居住用宅地等に該当する部分の合計面積
C・・・貸付事業用宅地等に該当する部分の合計面積

2.適用要件
この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に、この特例の適用を受ける旨の記載及び計算
に関する明細書その他一定の書類を添付する必要があります。
なお、この特例は、相続税の申告期限までに相続人等によって分割されていない宅地等については、
適用を受けられません。ただし、申告期限までに分割されていない宅地等が、次のいずれかに該当す
ることとなったときには、適用を受けることができます。
・申告期限後3年以内に分割された場合
・期限後3年以内に分割できないことについてやむを得ない事情があり、所轄税務署長の承認を受け
た場合、分割できることとなった日として定められた一定の日から4ヶ月以内に分割されたとき

被相続人が事業の用に供していた土地を相続しました。何か特例が適用されますか?

 

被相続人の事業に使用されていた部分に限って、小規模宅地等の特例により、面積400㎡まで相続税評価額を80%減額できます。

1.小規模宅地等(特定事業用)
(1)概要
事業の用に供している宅地等を相続すると、一定の面積(小規模宅地等)については、通常の方法で評価した価額から次に掲げる面積について次の減額割合を乗じて計算した金額を評価減として控除できます。
特定事業用宅地等   400㎡まで  80%

(2)特定事業用宅地
特定事業用宅地等とは、相続開始直前において被相続人等の事業の用に供されていた宅地等で、次のイ又はロに掲げる要件のいずれかを満たす被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したもの(その宅地等のうちイ又はロに掲げる要件に該当する親族が相続又は遺贈により取得した持分の割合に応ずる部分に限ります)もののことです。
イ.被相続人の事業用に使われていた宅地等を取得した被相続人の親族が、相続税の申告期限まで
の間にその宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を引き継ぎ、申告期限まで引き続きその宅
地等を有し、かつ、その事業を営んでいること。
ロ.被相続人と生計を一にしていた親族の事業用に使われていた宅地等をその親族が取得した場合
であって、その親族が相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続きその宅地等を自己の事業用に使用していること。

(3)被相続人等の事業の内容
不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業は、特定事業用宅地等に該当する事業から除外されます。
ただし、次の事業は不動産貸付業から除かれ、他の要件を満たせば特定事業用宅地等の特例の適用を受けられます。
・食事の提供を伴う下宿
・ビジネスホテル
・民宿
・ホテル
・その他上記に準ずる事業

(4)土地が複数ある場合
小規模宅地等の特例を複数の宅地に適用する場合、次の算式によって適用対象面積の調整が行われます。
A+B×5/3+C×2≦400㎡
A・・・特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等に該当する部分の合計面積
B・・・特定居住用宅地等に該当する部分の合計面積
C・・・貸付事業用宅地等に該当する部分の合計面積

2.適用要件
この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に、この特例の適用を受ける旨の記載及び計算
に関する明細書その他一定の書類を添付する必要があります。
なお、この特例は、相続税の申告期限までに相続人等によって分割されていない宅地等については、
適用を受けられません。ただし、申告期限までに分割されていない宅地等が、次のいずれかに該当す
ることとなったときには、適用を受けることができます。
・申告期限後3年以内に分割された場合
・期限後3年以内に分割できないことについてやむを得ない事情があり、所轄税務署長の承認を受け
た場合、分割できることとなった日として定められた一定の日から4ヶ月以内に分割されたとき

Copyright(c) 2014 遺産分割になったら最初に見るサイト All Rights Reserved.