失踪宣告について、説明してください。
<解答>
生死が不明の者がいる場合におきましては、その利害関係者が家庭裁判所に「失踪宣告」の申し立てをすることができるでしょう。失踪宣告が家庭裁判所からなされますと、戸籍上、行方不明者は死亡したことになります。
<解説>
(1) 民法においての手続き
生死不明の者が存在している場合におきましては、その者の推定相続人等、利害関係者が家庭裁判所に対して失踪宣告を求める申し立てをすることが可能になるでしょう。申し立てがあった場合におきましては、家庭裁判所は、一定期間(普通失踪においては6ヶ月以上、特別失踪においては2ヶ月以上)官報などで公告することになりまして、本人、もしくは生存を知っている者から届出がなかった場合においては、失踪宣告を行うことになるでしょう(民法30条)。この手続きによりまして、生死が不明の者については死亡したことが確定し、戸籍から抹消されることになるようです。
(2) 生死が不明の者とは
失踪宣告の対象になります行方不明者につきましては、2つの種類に区分されることになるでしょう。
1つは、「普通失踪」といいまして、7年間、生死が不明である場合におきまして、7年間を満了した場合においては、死亡したものとみなされます。
もう1つについては、「特別失踪」といいまして、船舶・戦争の沈没・天災ほか危難が及んだ以降に、生死が、1年間不明である場合におきましては、危難が去ったときに死亡したものとみなされることになるでしょう(民法31条)。
(3) 相続税の申告
失踪宣告が、家庭裁判所から出されますと、死亡したとみなされる日に、相続が開始されることになるため、相続税の申告をしなければなりません。
この場合におきまして、法定相続人は、失踪宣告が出されたときではなく、死亡とみなされたときで、判定することになってしまうため、相続税の税額計算・基礎控除などにつきましても、失踪宣告によって死亡とみなされた日時点の法定相続人の数、そして法定相続分によりまして計算することになるでしょう。相続税の申告期限については、一般的には、死亡を知った日から10ヶ月以内になるようですが、失踪宣告がなされた場合につきましては、失踪宣告がなされたことを知った日から10ヶ月以内になります。
(4) 相続人のうちに生死不明の者が存在した場合
生死が、被相続人の相続人のうちに不明の者が存在した場合におきましては、被相続人の遺産分割が不可能になってしまうことになるため、その行方不明者の代理人としまして、財産管理人選任の申し立てを家庭裁判所に行う必要があるでしょう。その代わりに、その行方不明の相続人につきましては、失踪宣告の申し立て手続きをすることも可能になるでしょう。
この場合において、失踪宣告によって死亡とみなされることになった日が、被相続人の死亡日より以前になれば、被相続人の法定相続人から外れることになるでしょう。同じく、被相続人の相続税の基礎控除・税額計算においても、法定相続人の数から除外されることになるでしょう。
(5) 失踪宣告の取り消し
失踪宣告の後に、実は生存していた、もしくは死亡時が違うことが証明された場合におきましては、本人、もしくは利害関係者が家庭裁判所に請求することによりまして、失踪宣告が取り消されることになるでしょう。この手続きによって、戸籍が元に戻るか、あるいは戸籍上の死亡日が修正されることになります(民法32条)。
ここで、すでに受取っていた財産が存在した場合においてはどうなると考えられるのでしょうか?原則として、失踪宣告によりまして受取っていた財産については、現に利益を受けている部分のみ返還すればよいでしょう。受取っていた財産につきましては、なされた契約等も、善意で行ったとされる場合については、遡りまして契約が無効になることもないことを覚えておくべきでしょう。
また、戸籍上の死亡日が修正になった場合におきましては、相続人が変わるケースも考えられます。相続人でなくなった者については、新たに相続人になった者に対し、現に利益を受けている部分を返還することになります。