‘相続税と保険’

Q.遺産分割後には、早いうちに分割財産や公共料金の名義変更を行う必要があるのでしょうか?

 

A.円滑に遺産分割が済んだら、分割財産や公共料金の名義変更を早いうちに行うといいでしょう。
名義変更が完了しなければ、次のような不都合が生じます。
・次の相続が発生した際の手続が複雑になる
・相続財産を売ることができない
・預貯金を相続税の納税資金に充当することができない

相続に伴う各種名義変更手続と費用については、次の通りです。

1.不動産
窓口は法務局(登記所)です。
提出書類は次のようになっています。
・土地家屋所有権移転登記申請書
・戸籍謄本・住民票・印鑑証明書(相続人)
・出生より死去までの戸籍謄本・戸籍の附票・除住民票(被相続人)
・固定資産税評価証明書
遺産分割協議書
費用は固定資産税評価額の0.4%です。

2.自動車
窓口は陸運事務所です。
提出書類は次のようになっています。
・移転登録の申請書
・有効な自動車検査証
・戸籍謄本(除籍者を含みます)
・自動車賠償責任保険証明書
遺産分割協議書
・相続人全員の同意書・印鑑証明書
費用は1車両につき500円です。

3.株券
窓口は証券会社で、証券会社に相続のことを告げます。
提出書類は次のようになっています。
・株主名義書換請求書
・株券
・戸籍謄本(除籍者を含みます)
遺産分割協議書
・印鑑証明書
費用は、1銘柄1万株未満の場合は500円、1万株以上の場合は1,000株以下を増すごとに50円加算、20万株以上の場合は1万円です。

4.預貯金
窓口は預貯金先(銀行か郵便局)です。
提出書類は次のようになっています。
・依頼書
遺産分割協議書
・戸籍謄本(除籍者を含む)
・相続人全員の印鑑証明書
・家庭裁判所の調停か審判で相続が決まった場合は、家庭裁判所が発行した調停調書謄本か審判書謄本
費用はかかりません。

5.電話
窓口は電話局です。
提出書類は次のようになっています。
・加入承継届
・戸籍謄本(除籍者を含む)
費用はかかりません。

6.電気・ガス・水道
窓口は最寄りの各営業所です。
提出書類は特になく、費用はかかりません。

Q.将来の相続に向けて生前にできる対策は、何かありますか?

 

A.将来の相続に向けて相続開始前にできることを以下に述べます。

1.暦年課税贈与で相続財産より分離する
110万円の基礎控除を活用し、毎年手堅く子に贈与していくといいでしょう。暦年課税贈与については、贈与者が死去した際に相続税を算出するに当たり、原則として贈与財産の価額を相続財産の価額に加算する必要はありません。
ちなみに、相続時精算課税贈与の場合は、特別控除額は2,500万円ですが、贈与財産は贈与時の価額で相続税の課税財産に算入されることになります。

2.暦年課税贈与の配偶者控除を利用して自宅を贈与する
婚姻期間が20年以上である場合において、夫婦間で居住用不動産か居住用不動産を取得するための金銭の贈与がなされたときには、基礎控除(110万円)に加えて配偶者控除(2,000万円)の適用を受けることができます。

3.収益物件を贈与する
家賃収入を得られる建物を贈与した場合には、家賃が子の収入となります。なお、贈与するのは建物のみで構わず、敷地を贈与しなければならないわけではありません。
贈与金額は、固定資産税評価額の70%となり、固定資産税納税通知書で確認することが可能です。
・贈与金額が少額となるのであれば、暦年課税贈与を行います。
・贈与金額が多額となるのであれば、精算課税贈与を行います(将来相続財産に合算されるものの、相続開始までの家賃を子に帰属させることが可能です)。
・上記のいずれでもないのであれば、複数年に分けて暦年課税贈与(共有持分の贈与)を行います。

4.退職金支給で評価を下げて自社株を贈与する
オーナー社長の引退や老齢で相続の時期が近づいている場合には、多額の退職金を社長に支給して大幅に利益を圧縮し、自社株式の評価額を引き下げます。株価が下がったところで、相続時精算課税制度を用いて後継者に贈与します。

5.小規模宅地等の特例の適用要件を確認する
小規模宅地等の特例というのは、居住用宅地につき240㎡まで(平成27年1月1日以降に相続か遺贈によって取得する財産に係る相続税については330㎡まで)、事業用宅地につき400㎡まで80%の評価減を、貸地等につき200㎡まで50%の評価減を受けることができるという制度です。
相続開始前に、上記の特例の適用要件を満たしておくといいでしょう。

6.孫を養子にする
養子が一人増えたら、基礎控除が1,000万円(平成27年1月1日以降に相続か遺贈によって取得する財産に係る相続税については600万円)増加するほか、適用税率が下がることがあります。そして、養子にしても相続財産を分配しなければならないわけではありません。法定相続人の数を増やすことに意義があるのです(法定相続人の数に含める養子の数は、一定の人数までとされています)。
また、孫を養子にした場合、相続税を1代飛ばすことができるというメリットもあります。
なお、孫を養子にした場合のデメリットは、孫の相続税額が2割加算となることです。

7.預金ではなく生命保険で残す
生命保険金は指定した受取人の固有の財産ですので遺産分割の対象とはならず、確実に受取人のものとなります。さらに、生命保険金は、500万円に法定相続人の数を乗じた額まで非課税とされています。

8.会社分割で円滑に事業承継を行う
後継者が2人存在する場合には、生前に会社を分割し、兄弟でトラブルになることにないようにしましょう。
例えば、創業者がA社の株を100%有していて、A社はa事業とb事業を行っている場合、按分型の新設分割によってB社を設立し、B社にb事業を移します。この時点でA社とB社の株を100%有している創業者は、両者の経営を見つつ、生前贈与、親子間譲渡、遺言によって、A社株式を長男に、B社株式を次男に取得させます。

9.物納の条件整備をしておく
(1)測量等を行っておく
物納申請のためでも、相続発生後に要した測量費用、境界確認費用等に、相続税の債務控除は適用されません。相続が発生する前に行っておくと、相続財産がその費用分減少しますので、相続税の負担もその分軽減されます。
(2)隣地の人と仲良くしておく
物納時には、隣地の人より境界確認の印をもらうことになりますので、隣地の人々とは日頃より良好な関係を築いておくことが重要です。

Q.持分の定めのある社団医療法人の理事長は、出資持分に係る相続対策を取る必要があるのか否かについて教えてください。

 

A.遺産分割をめぐるトラブルや重い相続税の負担が、病院が存続の可否を左右する場合もあることから、前もって相続税に関するシミュレーションをし、納税資金の確保等も含めた対策を取っておかなければなりません。

1.重要課題といえる出資持分の承継
多くの場合、持分の定めのある社団法人の理事長の出資持分の評価は高額となりますので、後継者等の相続人の相続税への影響が小さくありません。したがって、理事長にとって、後継者に対する出資持分の承継は大きな課題といえます。
ゆえに、後継者等の相続人が負担する相続税額がどの程度になるかを事前に把握して、長期間にわたり相続税対策の検討を行わなければなりません。

2.理事長に相続が生じるまでに確かめる事項
理事長個人の相続財産や債務の全体像を把握し、相続税納税資金がどの程度必要であるかということや必要額の有無について確認を行います。また、後継者等の後継者に対していかに財産を分割するかについて検討を行います。例えば前もって、次に掲げることの確認をします。
(1)医業用不動産(土地、建物)の所有者は理事長であるか。
相続財産は相続税評価額によって評価を行いますが、一定の要件に合致する土地であるなら、最高80%の評価減となる「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の適用を受けることができます。
(2)理事長の出資持分はどのくらいの評価となるか。
後継者が理事長の出資持分を承継していくと思われますので、その出資持分がどの程度の評価となるかを分かっておくことは大切です。
(3)理事長から医療法人への貸付金は存在するか。
理事長から医療法人への貸付金(医療法人にとっては借入金)は、理事長個人の相続財産ということになります。
(4)理事長個人の財産のうちで換金できる財産はどの程度存在するか。
後継者以外の相続人への分割財産や相続税納税資金を確保できるかを確認します。

3.前もって出資持分の評価をすることの重要性
理事長の相続財産のうちで、医療法人の出資持分は非常に重要なものです。出資持分は相続時点に
おける評価額で評価されますが、医療法人については法律で剰余金の配当が禁じられていますから、
長年にわたって利益が内部に蓄積している法人であれば、相続時点での出資持分の評価額が設立当初
の出資額を大きく上回ることも多いといえます。
そして、出資持分の評価額が高くなって、後継者に医業承継財産が集中すると、出資持分には換金
性がありませんから、後継者となる相続人の納税資金が不足してしまう場合もあります。
ゆえに、円滑に後継者への事業承継を行うには、現状における医療法人の出資持分の評価をした上で、後継者がどの程度の相続税を負担することになるかをシミュレーションすることが必要となります。

4.出資持分の評価が高額である場合の相続対策
出資持分の評価額が高額である場合、後継者の納税の負担は大きくなると思われます。したがって、前もって出資持分の評価を引き下げて、出資持分の一部を後継者に移転させることで相続財産そのものを理事長から切り離すこと、また、どのようにすれば納税資金を確保できるかに関して検討を重ねることが重要になります。
(1)出資持分の評価を下げる方法の例
理事長の勇退に伴う退職金の支払いは、出資持分の評価を下げるための方法の一つといえます。 退職金を支払うと多額の経費が生じますので、医療法人の純資産が減少します。純資産の減少により出資持分の評価は下がりますので、その時期に出資持分を後継者に移転しましょう。譲与と贈与という二つの移転方法が存在します。
(2)納税資金を確保する方法の例
後継者が既に医療法人の理事等である場合は、不相当に高額な役員報酬ではない範囲内で、その後の納税資金をある程度意識した役員報酬の設定を行うことが大切です。
そのほか、生命保険を活用し、理事長に相続が生じた際に医療法人が遺族(後継者)に対して支給する死亡退職金を納税資金とするという方法等が挙げられます。

父に相続が生じましたが、母は既に他界しているので相続人は私と妹が該当します。父の所有していた財産は自宅の不動産(相続税評価額は8,000万円)と保険金(3,000万円)です。妹とは自宅についての遺産分割は父と同居していた私が相続することで合意しました。しかし、保険金の受取人についても私が相続人であったため、妹は少しの財産も相続できません。妹と不動産を共有したくはありませんが、何かいい解決策はありませんか。

 

解決の方法の一つに代償分割という方法がございます。代償分割とは遺産分割の方法であり、相続人の1人もしくは数人が相続財産を手に入れて、その相続財産を手に入れた人が別の相続人に代償金などを支払う方法を指していいます。
あなたの場合には、自宅の不動産の全て及び保険金を手に入れることを見返りとして、妹に対して代償金を支払うという方法が考えられます。

【解説】
1、不動産を共有で相続する場合
遺産分割に関して、相続財産が不動産だけの場合には、その不動産を共有持分として相続することが可能になります。しかし、兄弟と不動産を共有した場合には、売却などの処分につきましても共有者の同意を得る必要が発生し、また、この先財産が細分化されていく場合もございます。
仮に、妹とあなたがご自宅の不動産につきまして相続を行った場合、ご自宅の立て替え・買い換えをされる場合は、全て妹の同意が必要になってきます。

2、小規模宅地等の特例
相続税の計算の上で、小規模である宅地などの特例の適用につきましては、その不動産の取得者1人1人に判定を行うため、一定の用件を満たさない相続人がその不動産を相続したとしても適用を受けられない可能性も考えられます。また、同居する親族がご自宅を相続された場合、一定の要件を満たすことで、240㎡まで80%の減額を受けることが可能になります。
仮に、妹とあなたがご自宅である不動産を1/2ずつを共有のものとして相続し、一定の用件を満たすことができた場合、あなたの相続する持分だけが80%の減額の対象になり、妹が相続する持分について特例は適用されません。
具体的に計算した場合、以下のようになります。
①全ての相続をあなたがした場合の相続税の評価額の計算
8,000万円×(1-80%)=1,600万円
②妹とあなたが1/2ずつ共有で相続された場合の相続税の評価額の計算
あなたの持分:8,000万円×1/2×(1-80%)=800万円
妹の持分:8,000万円×1/2=4,000万円
合計:4,800万円

3、代償分割
あなたがご自宅である不動産について全てを相続することによって、この先の処分もご自身だけの判断で行うことが可能で、小規模な宅地等の特例の適用がされることができます。
妹につきましてはその見返りとして、保険金及びご自身の現預金など諸々から代償金を支払えば円滑に遺産分割を行うことができます。
留意点は次のとおりです。
①代償分割を行う予定して話を進めている場合、生命保険金などで代償金に見合った財産を生前から用意しておく必要があります。
②相続によって手に入れた不動産を売却した上でその代金を分割した場合には換価分割と考えられますので、売却についての所得税などの負担が生じる場合がでてきます。
③代償財産として交付する財産について、その財産が交付する相続人の所有している不動産の場合には、その交付した時の時価でその不動産を売却したとみなし、所得税などが課せられます。

生命保険については、遺産分割に有効であると耳にしましたが、どのような点で有効になるのでしょうか?

 

<解答>
生命保険金につきましては、指定した受取人の固有の財産となりますため、遺産分割を行わずに、あげたい人に確実に財産を分けることが可能になるため、遺産分割を行いやすくすることが可能になります。

<解説>
(1) 相続対策として生命保険金の活用
相続対策を考えていく中で、生命保険を活用することが有効になってくると考えられます。生命保険を活用することの効果としましては、「納税資金対策」、「遺産分割対策」、「相続税の軽減対策」の大きく3つに分けられることになります。

(2) 遺産分割対策(あげたい人にお金が届く。)
死亡保険金については、保険契約上で指定した受取人の固有財産となります。したがいまして、遺産分割を行うことなく確実に受取人として指定された相続人のものとなるでしょう。また、相続放棄をしたと仮定しましても、生命保険金を受け取ることが可能となるでしょう。
例えば、相続財産としての預金1億円を長男、長女、次男で相続する場合につきましては、遺産分割協議という話し合いによりまして、どのように分けるのかを決めなければならないことに留意しなければなりません。
これでは各社の主張がぶつかりあってしまい、なかなか分割を決めることは不可能になってしまうでしょう。しかし、同じ1億円であったとしても生命保険金であれば、あらかじめ受取人を指定しておくことが可能となりますので、受取人固有の財産としまして、遺産分割協議をすることをせずとも、平等に財産を分けることが可能となるのです。
また、例えば相続財産が長男の自宅の土地1億円だけしかないといった場合においても、次男にも平等に財産を分けようとしても分ける財産が存在していないでしょう。自宅を売却すれば、資金に変えることも可能になりますが、自宅は長男が生活しておりますので、納得がいかないのも当然といえます。結果として遺産分割はうまくいかないことになってしまうでしょう。
そこで生命保険を活用するという方法があります。長男が自宅の土地を相続したと仮定しても、次男には生命保険金1億円が支払われることになります。したがいまして2人とも1億円ずつの相続財産を相続することになって、スムーズに遺産分割を進めることが可能となるでしょう。さらに、事業を承継してもらう長男に自社株や事業用不動産を継続させたい場合における他の相続人に対する活用としても有効だと考えられます。
そのほか、相続人の1人が、遺産を取得した代償としまして、他の相続人に金銭その他の財産を与える分割方法である代償分割に生命保険を活用するなどスムーズな遺産分割が実現可能となります。

(3) 納税資金対策
原則として、相続税は亡くなった日から10ヶ月以内に現金で納付しなくてはならないことになっております。相続財産の仲に相続税を払うことができるだけの現金や預貯金がなければ、相続税を支払うための準備をしなければなりません。現金や預貯金を相続税が支払うことができる額まで貯めるのに時間を要する場合につきましては、その不足分を補うために生命保険を活用することによって、相続税の納税資金を確保することが可能となるでしょう。生命保険に対しての加入については相続が起きてしまってからでは遅くなってしまうため、生前に相続人がいくら相続税を支払うのかを知って、そのうちいくら現金で納付することが可能となるのか、場合によっては不動産の売却や延納、物納も視野に入れて、生命保険金でいくら納付するべきなのか、あらかじめシミュレーションをしておく必要があると考えられます。

(4) 相続税の軽減対策
生命保険につきましては、保険金の全てに課税されるわけではないことに留意しなければなりません。被相続人の死亡によって相続人が取得された生命保険金のうち、「法定相続人1人あたり500万円」については、非課税になりまして、相続税は課税されることはないことを覚えておくと良いでしょう。生命保険に加入していないのであれば、最低限この非課税相当額につきまして預貯金を生命保険に置き換えておくことだけで、相続税の軽減対策として有効になりえます。
なお、生命保険金については相続を放棄した場合については受け取ることが可能となります。しかし、非課税の適用を受けることは不可能となってしまいますので、注意しなければならないでしょう。

(5) まとまったお金の支払いに活用
前述したとおり、被相続人が現預金として持っている場合において、相続人の間での遺産分割協議が必要になってきます。なおかつ、預貯金の場合につきましては、遺産分割協議が成立してから米議変更が行われるまでにつきましては、遺産分割協議が成立しまして名義変更が行われるまでは、凍結してしまうことになりますから、葬儀費用の支払いや病院への入院費用の支払いなど、まとまったお金を引き出そうとしても自由に引き出すことは不可能になってしまうでしょう。しかし、生命保険の場合につきましては、遺産分割を行うことなく、保険会社へ書類を提出できれば、数日間でまとまった資金を現金で準備することが可能になりまして、葬式費用や病院への支払いなどを行う際に有効となるでしょう。

(6) 保険料相当額の贈与
贈与税の110万円を基礎控除を利用することにし、子供や孫に生命保険料相当額の贈与をすることによって、生命保険を活用することが可能になりえます。
子供や孫につきましては、贈与を受けた保険料相当額によりまして、被保険者を親や祖父母とする生命保険に加入することになります。この場合につきましては、親や祖父母に相続が起きたと仮定しても、支払われる保険金につきましては、相続財産ではなく、子供あるいは孫の一時所得となることに留意しなければなりません。したがいまして、少ない税負担で納税資金を確保することが可能となりえます。
なお、この保険金に係っている税額については、
{(保険金額—保険料—50万円)×1/2}×所得税・住民税率
となりえます。

<留意点>
(1) 連年で一定金額を贈与した場合につきましては、その実質によって初年度におきまして、一括贈与をしたとみなされまして、課税される可能性も存在しています。
(2) 子供や孫が受けた金額が、110万円を超えてしまう場合につきましては、贈与税の申告および納税が必要になるでしょう。
(3) 保険料相当額の贈与につきましては、きちんとした贈与の手続きを行う必要があると考えられます。
・ 基礎控除(110万円)以上の贈与を行って、贈与税の申告を行う。
・ 生命保険料につきましては、子供や孫が支払いまして生命保険料控除の申告を行う。
・ 贈与契約書を作成する・確定日付をとる。
・ 贈与を受けている口座の通帳、印鑑の管理については、子供や孫が行う。

(4)子供や孫の所得が高い場合についてや相続財産が少額の場合につきましては、相続税額よりも所得税額の方が高くなってしまいまして、多く税金を納める場合も存在していますので、事前にシミュレーションが必要になります。

主たる相続財産の相続税評価額の算出方法を教えてください。

 

相続税額を算出するためには、相続財産について相続税評価額の計算を行う必要があります。土地、建物、有価証券及び現預金が、主たる相続財産といえます。
主たる相続財産の相続税評価額は、次の通りです。

1.不動産
(1)土地
路線価評価額等(国税庁のWebサイトで確認できます。)
(2)家屋
固定資産税評価額(納税通知書に記されています。)
(3)貸家
固定資産税評価額の70%

2.有価証券
(1)上場株式
現在の株価×持株数(新聞株価欄)
(2)未上場株式
1株純資産×持株数(1株純資産=自己資本÷株式総数)
(3)投資信託
現在の時価×口数(新聞株価欄)
(4)その他証券
額面金額

3.現預金
現在の残高

4.その他
(1)生命保険金、退職手当金
保険金-非課税額(非課税額=500万円×法定相続人の数)
退職金-非課税額(非課税額=500万円×法定相続人の数)
(2)ゴルフ会員権
時価の70%程度(取引業者への問合せを行います。)

生命保険金にも相続税が課されるのでしょうか?

 

民法においては受取人固有の財産であるものの、相続税法においては相続財産として扱われて相続税が課税される財産が存在します。この財産は「みなし相続財産」と呼ばれ、生命保険金はみなし相続財産に該当します。
生命保険金については、全ての相続人が受領した保険金の合計額が500万円×法定相続人の数を上回る場合、その上回る部分に相続税が課されます。

なお、死亡保険金は指定した受取人の固有の財産となることから、預金で遺された場合とは違い、遺産分割をせずに確実に受取人のものになります。

相続税の計算は、どのように行いますか?

 

民法等に定められた相続税を計算する上での財産から、非課税の財産・債務・葬儀費用等を引いて、これらを相続人が法定相続分によって相続した場合の税率により、計算されます。

1.相続税の計算のしくみ
相続税を計算する場合には、まず、被相続人の遺産を合計し、それらが法定相続分通りに相続され
たと仮定した上で、相続税の総額を出します。その税率は超過累進税率となっており、財産を多く持っている人ほど、税率が高くなります。
さらに、相続税の総額を、相続人が実際に取得した財産の額に応じて按分して、各種税額控除を差し引いた金額が、最終的に各々の相続人の負担する相続税額ということになります。

2.具体的な計算の流れ
(1)課税価格の合計額の計算
相続税の課税対象となるのは、土地・建物・株式・預金等の資産のほとんどです。被相続人の死亡によって受領する生命保険金や退職金も含まれます。
そして、非課税財産や借入金等の債務、葬式費用を引いたり、3年以内に贈与された財産の金額を足したりすることにより、課税価格の合計額を求めます。

(2)相続税の総額の計算
(1)で計算した課税価格の合計額から基礎控除を引き、相続人が法定相続分通りに相続したものと仮定した上で、各人の税額を計算し、それらを合計して相続税の総額を出します。なお、基礎控除は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」で、例えば、妻と子供2人の場合には、5,000万円+1,000万円×3=8,000万円です。
養子については、被相続人に実子がある場合は1人まで、実子がない場合は2人までが法定相続人の数に算入されます。

(3)納付税額の計算
(2)で計算した相続税の総額を、実際に各相続人が相続した財産の割合に応じて按分し、各人の算出税額を出します。この算出税額を基に各種の加算や控除を行うことによって、各人が実際に支払う金額が決まります。主たる加算・控除項目は、次の通りです。
・相続税の2割加算
1親等の血族と配偶者以外は、相続税額が2割増しになります。養子については原則として2割
加算の対象外ですが、平成15年度の改正により、養子縁組した孫について2割加算の適用が追加
されました。婿養子や嫁養子については、引き続き2割加算の対象外となります。
・配偶者に対する税額軽減
配偶者が相続した財産が1億6,000万円まで、又は1億6,000万円を超えていても配偶者の法定
相続分までならば、相続税はかかりません。なお、配偶者に対する税額軽減の適用を受けるには、
相続税の申告が必要です。
ほかに、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除、外国税額控除があります。

相続税は、どのようなものに対して課されますか?

 

相続税は、相続や遺贈により取得した財産・相続や遺贈により取得したとみなされる財産等に対して課されます。

1.本来の相続財産
本来の相続財産とは、本来の相続や遺贈という形で取得した財産で、金銭に見積もることができる経済的価値のある全てのものをいい、具体的には、被相続人が死亡時に所有していた土地(借地権を含みます)・家屋等の不動産、有価証券(自社株式を含みます)、預貯金その他経済的価値を有する全てものが、これに該当します。

2.みなし相続財産
みなし相続財産とは、民法上の相続財産ではありませんが、実質的には相続や遺贈により財産を取得したのと同様な経済的効果があると認められ、課税の公平を図るためにその受けた利益等を相続や遺贈により取得したものとみなして、相続税法の定めによって相続税がかかるものをいいます。例えば、生命保険金(ただし、一定の金額は非課税)、退職金・功労金(ただし、一定の金額は非課税)、生命保険契約に関する権利、定期金の受給に関する権利、保証期間付定期金に関する権利、契約に基づかない定期金に関する権利が、みなし相続財産に該当します。

3.相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産
相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産は、相続税の課税対象になります。この場合、財産の価額は、相続時の評価額ではなく、贈与時の評価額となります。
相続税と贈与税の二重課税を避けるため、課税された贈与税は「贈与税額控除」として相続税額から控除されます。ただし、贈与税額控除が算出された相続税額より多い場合にも、贈与税は還付されません。
ちなみに、相続開始前3年以内とは、相続開始の日からさかのぼって3年目の応当日~その相続開始の日の期間のことです。例えば、相続開始の日が平成23年5月8日なら、平成20年5月8日~平成23年5月8日の間です。
また、相続開始前3年以内に被相続人からその配偶者(贈与時点で被相続人との婚姻期間が20年以上である者に限ります)が贈与により取得した居住用不動産又は金銭で、特定贈与財産に該当するものは、その価額を相続税の課税価格に加算しないこととされています。
特定贈与財産とは、次のいずれかに該当するもののことです。
・相続開始の年の前年以前に贈与により取得した財産で、贈与税の配偶者控除の適用を受けたもののうちその控除額に該当する部分
・その配偶者が被相続人からの贈与について贈与税の配偶者控除の適用を受けたことがない者である場合において、相続開始の年に贈与により取得した財産のうち、その財産について贈与税の配偶者控除の適用があるものとした場合に、その控除額として控除されることとなる金額に相当する部分

4.相続時精算課税制度の贈与財産
相続時精算課税制度を選択適用した場合の贈与財産は、相続税の対象になります。
すなわち、子は親からの相続時に、それまでの贈与財産と相続財産を合算して計算した相続税額から、既に支払った相続時精算課税制度に係る贈与税相当額を控除します。相続税額から控除しきれない場合、その控除しきれない贈与税相当額の還付を受けることができます。
なお、相続財産と合算する贈与財産の価額は、贈与時の時価となります。

配偶者が相続財産を取得した場合、相続税額の軽減措置はありますか?

 

配偶者の税額軽減により、配偶者が取得した財産が遺産総額の法定相続分まで、又は1億6,000万円までなら、納付税額はゼロとなります。

1.配偶者に対する相続税額の軽減
配偶者に対する相続税については、主に次のようなことから、配偶者が納付すべき相続税額のうち一定額を軽減する軽減措置が講じられています。
・同一世代間の財産移転であり、子が財産を取得した場合に比べて、次に相続税が課税されるまでの期間が短いこと。
・配偶者は被相続人の財産の維持・形成に貢献していること。
・被相続人の死亡後における生存配偶者の生活保障のため。

2.配偶者の相続は法定相続分まで税額ゼロ
配偶者が相続財産のうち法定相続分又は正味財産額1億6,000万円までの相続財産を取得した場合、その配偶者について相続税はかかりません。例えば、夫・妻・子供という家族構成の場合、夫が死亡すると、妻の法定相続分は1/2となり、妻は相続財産の1/2まで相続しても納付税額はゼロです。

3.配偶者の税額軽減の計算
次のイとロのいずれか少ない方の金額が、配偶者の税額軽減額となります。
イ.配偶者の算出相続税額からその配偶者の贈与税額控除額を控除した金額
ロ.次の算式によって計算した金額
相続税の総額×配偶者の法定相続分相当額(1億6,000万円未満なら1億6,000万円)と配偶者の実際取得額のうちいずれか少ない方の金額/課税価格の合計額=配偶者の税額軽減
この場合の「配偶者の法定相続分」は、相続の放棄があった場合でも、その放棄がなかったものとした場合における相続分をいいます。

4.相続財産が未分割の場合
配偶者の税額軽減が受けられる財産は、原則として、相続税の申告期限までに遺産分割等によって現に配偶者が取得したものに限られます。しかし、申告期限までに遺産分割が行われなかった場合でも、申告期限から原則として3年以内に分割されたときには、適用を受けることができます。
また、相続財産の一部が未分割の場合の配偶者の税額計算については、債務控除はまず未分割の財産に充てられたものとして計算します。

5.申告要件
配偶者に対する相続税額の軽減の適用を受けるためには、相続税の申告書(期限後申告書及び修正申告書を含みます)に、その適用を受ける旨及びその計算に関する明細を記載して、次に掲げる書類を添付の上、その申告書を提出しなければなりません。配偶者の税額軽減の適用を受けることによって納付税額がゼロとなる場合でも、申告が必要となります。
・戸籍の謄本(相続開始の日から10日を経過した日以後に作成されたもの)
・遺言書の写し、遺産分割協議書(その遺産分割協議書にその相続に係る全ての共同相続人及び包括受遺者が自署押印した上、印鑑証明書を添付したものに限ります)の写し、その他の財産の取得の状況を証する書類(生命保険金や退職金の支払通知書等)
なお、相続税の申告書を提出する際に、遺産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていない場合において、その申告書の提出後に分割される遺産について相続税額の軽減の適用を受けようとするときは、申告書にその旨並びに分割されていない事情及び分割の見込みの詳細を記載した書類(申告期限後3年以内の分割見込書)を添付する必要があります。

Copyright(c) 2014 遺産分割になったら最初に見るサイト All Rights Reserved.