‘遺産分割’

物納申請中に、相続が開始された場合についてが、わかりません。

 

<解答>
物納申請中における、土地については相続財産となり、物納申請に係っている未納の相続税については、債務控除の対象となる。

<解説>
(1) 物納申請に係っている財産及び債務の承継
相続人は、民法899条において、その相続分に応じて、被相続人の権利義務を承継すると規定されている。また、国税通則法第5条においては、国税の納付義務について、相続人が相続分に応じて承継することとされている。
このため、相続の開始が、物納申請中にあった場合においては、被相続人が物納申請を行っている相続税額について、その物納申請を、各相続人が行っているものとして取り扱われることになる。
したがって、物納申請中の土地にいては、相続財産になり、物納申請に係っている未納の相続税については債務控除の対象となることになる。

【注意点】
(一) 物納申請書については、相続税の納期限、あるいは納付すべき日(相続税の申告期限については相続の開始があった日から10ヶ月以内)までに提出しなければならないと規定されている。
物納財産を、国は換金することになるため、物納要件については、細かく規定されている。また、要件を満たしていない場合については、却下されたり物納財産の変更を求められたりすることもあるため、注意が必要だろう。
このため、相続が、物納申請中において発生した場合においては、物納についての一定の結論を得ることができるまでの間については、遺産分割を行わないほうが良いと考えられる。
(二) 物納申請中の財産と、その物納申請に係っている未納の相続税債務の承継についてだが、承継する債務と承継する財産の割合が異なる場合など、承継の方法によって、問題が発生する場合などが存在していると考えられるため、事前に税理士などの専門家にご相談されることをお勧めする。

失踪宣告について、説明してください。

 

<解答>
生死が不明の者がいる場合におきましては、その利害関係者が家庭裁判所に「失踪宣告」の申し立てをすることができるでしょう。失踪宣告が家庭裁判所からなされますと、戸籍上、行方不明者は死亡したことになります。

<解説>
(1) 民法においての手続き
生死不明の者が存在している場合におきましては、その者の推定相続人等、利害関係者が家庭裁判所に対して失踪宣告を求める申し立てをすることが可能になるでしょう。申し立てがあった場合におきましては、家庭裁判所は、一定期間(普通失踪においては6ヶ月以上、特別失踪においては2ヶ月以上)官報などで公告することになりまして、本人、もしくは生存を知っている者から届出がなかった場合においては、失踪宣告を行うことになるでしょう(民法30条)。この手続きによりまして、生死が不明の者については死亡したことが確定し、戸籍から抹消されることになるようです。

(2) 生死が不明の者とは
失踪宣告の対象になります行方不明者につきましては、2つの種類に区分されることになるでしょう。
1つは、「普通失踪」といいまして、7年間、生死が不明である場合におきまして、7年間を満了した場合においては、死亡したものとみなされます。
もう1つについては、「特別失踪」といいまして、船舶・戦争の沈没・天災ほか危難が及んだ以降に、生死が、1年間不明である場合におきましては、危難が去ったときに死亡したものとみなされることになるでしょう(民法31条)。

(3) 相続税の申告
失踪宣告が、家庭裁判所から出されますと、死亡したとみなされる日に、相続が開始されることになるため、相続税の申告をしなければなりません。
この場合におきまして、法定相続人は、失踪宣告が出されたときではなく、死亡とみなされたときで、判定することになってしまうため、相続税の税額計算・基礎控除などにつきましても、失踪宣告によって死亡とみなされた日時点の法定相続人の数、そして法定相続分によりまして計算することになるでしょう。相続税の申告期限については、一般的には、死亡を知った日から10ヶ月以内になるようですが、失踪宣告がなされた場合につきましては、失踪宣告がなされたことを知った日から10ヶ月以内になります。

(4) 相続人のうちに生死不明の者が存在した場合
生死が、被相続人の相続人のうちに不明の者が存在した場合におきましては、被相続人の遺産分割が不可能になってしまうことになるため、その行方不明者の代理人としまして、財産管理人選任の申し立てを家庭裁判所に行う必要があるでしょう。その代わりに、その行方不明の相続人につきましては、失踪宣告の申し立て手続きをすることも可能になるでしょう。
この場合において、失踪宣告によって死亡とみなされることになった日が、被相続人の死亡日より以前になれば、被相続人の法定相続人から外れることになるでしょう。同じく、被相続人の相続税の基礎控除・税額計算においても、法定相続人の数から除外されることになるでしょう。

(5) 失踪宣告の取り消し
失踪宣告の後に、実は生存していた、もしくは死亡時が違うことが証明された場合におきましては、本人、もしくは利害関係者が家庭裁判所に請求することによりまして、失踪宣告が取り消されることになるでしょう。この手続きによって、戸籍が元に戻るか、あるいは戸籍上の死亡日が修正されることになります(民法32条)。
ここで、すでに受取っていた財産が存在した場合においてはどうなると考えられるのでしょうか?原則として、失踪宣告によりまして受取っていた財産については、現に利益を受けている部分のみ返還すればよいでしょう。受取っていた財産につきましては、なされた契約等も、善意で行ったとされる場合については、遡りまして契約が無効になることもないことを覚えておくべきでしょう。
また、戸籍上の死亡日が修正になった場合におきましては、相続人が変わるケースも考えられます。相続人でなくなった者については、新たに相続人になった者に対し、現に利益を受けている部分を返還することになります。

適正な遺留分減殺について、説明してください。

 

<解答>
相続人の間の合意がとれて、寄与分などを考慮した結果、3億円となったのであれば、差額の5000万円については贈与税はかかることはないと考えられます。

<解説>
(1) 遺留分減殺請求
相続人であります子供たちに全部の財産を相続させるとの遺言が存在した場合において、相続人であるほかの子供たちにつきましては、最低限度の生活保障を行うといった観点から考え、法定相続分の1/2の遺留分という権利が認められており、法定相続分の1/2までについては、相続財産を返却してもらうことが可能になるようです。この場合において、遺留分減殺請求を行う子供と遺言の指定があった子供とは、経済的に、対立した関係にあるといえるかもしれません。単純にこの場合において、その相続時の財産額だけではなく、被相続人の財産維持などに貢献してきた人の寄与分が問題となるケースが存在しているようです。

(2) 寄与分
この寄与分とは、1980年民法改正によって、明文化されものでありまして、共同相続人の中に、被相続人の財産維持、あるいは増加につきまして特別に寄与した者が存在している場合については、相続分とは他に寄与分としまして、その相続人に取得させることとしたものになります。
実務においては、相続開始のときにおきまして、被相続人が所有していた財産の価額から共同相続人の協議で定めました、その者の寄与分を控除したものを相続財産とみなします。そして、法定相続分によって、算定を行った相続分に寄与分を加えた額をもちまして、その者の相続分とする取り扱いになります。

(3) 遺留分における相続税実務
厳密にいうと、遺留分相当額を取得するべきと考えられることになりますので、多すぎても少なすぎても、贈与税の問題が生じるとも考えられます。
しかし、経済的に対立関係にあります、当事者同士でお互いに贈与するという認識がまず存在しません。また、民法においての法定相続分についても、遺産分割までの潜在的な被相続人からの権利の取得の割合を定めたものであり、遺産分割協議によりまして、この法定相続分と違う分割割合となったとしましても、贈与税の課税はないことに留意しなければならないでしょう。
このケースにおいては、寄与分を考慮し、3億円の不動産を取得したことになるようですが、実際には遺留分減殺の請求事案におきましては、その価額を厳密に考えまして、価額弁償金等を決めまして分割するケースは少ないといえるかもしれません。

遺産分割のやり直しと贈与税について、説明してください。

 

<解答>
単純な遺産分割のやり直しは贈与になってしまうようですが、このような場合については贈与税の課税については行われることはないと考えられます。

<解説>
(1) 単純な遺産分割のやり直しは贈与になる。
相続においての遺産分割については、その分割方法が代償分割、現物分割、もしくは換価分割であるか、また、その分割の手続きについてが、調停、遺産分割協議、あるいは審判によって分割であるかどうかを問われることなく、どのような分割であったとしても、有効に成立することができれば一件落着となります。
しかし、一旦有効に成立を行った遺産分割について、遺産分割の再度やり直しとして再分配を行った場合については、その再分配によって取得できた財産は、先程述べた「分割によって取得した財産」には、該当することはないと考えられるでしょう。
つまり、一度取得を、各相続人が行った財産をさらに贈与によって、移転されたとみなされることになります。そこに、贈与税が課税されることになるため、注意しなければなりません。これが大原則となるでしょう(相続税基本通達19の2−8)。

(2) 遺産分割が無効であったら、取消されるべき原因によって取り消された場合
では、当初の遺産分割が無効であったり、取消されるべき原因によって取り消されたりした場合についてはどうなるのでしょうか?
単純遺産分割のやり直しにつきましては、贈与税の対象になるという考え方については、遺産分割が法律上、有効に成立されたものであるということを前提にしたものになっているようです。したがいまして、当初の遺産分割が無効であったり、取り消されるべき原因によって取り消されたりした場合につきましては、当初の遺産分割による財産の帰属自体に問題が生じているとことになるため、そのやり直しが本来の遺産分割であると言えます。ですから、このような場合については、贈与税等の課税関係が生じることはないと考えられます。

(3) 遺産分割の合意解除
では、相続人全員で、遺産分割を合意し、解除した場合についてはどうなるのでしょうか?
過去の判例においては、遺産分割協議が遺産の帰属を相続時に遡及することにしまして創設時に定める一種特別の合意であるという特殊な正確があるということ、また、遡及を有している遺産の再分配を認めると法的安定性が著しく害されてしまうといった理由によりまして、民法541条等による法定解除が許されることはないと考えられていたようです。しかし、1990年の最高裁の判決によって「共同相続人はすでに成立している遺産分割について、その全部あるいは一部を全員の合意によって解除したうえ、改めまして分割協議を成立させることが可能であります」という判断を示しました(最高裁1990年9月27日判決)。

(4) 遺産の再分割時の注意点
裁判による解除であったとしても、合意解除であっても無条件で再分配が認められるわけではなく、(1)裁判上の争いがなれ合い的な訴訟であるかどうか、(2)裁判所の和解勧告によって当初の遺産分割が無効であることを確認した事実経過的な内容、(3)合意を解除した時期・理由が重視されるものと考えられております。

生命保険については、遺産分割に有効であると耳にしましたが、どのような点で有効になるのでしょうか?

 

<解答>
生命保険金につきましては、指定した受取人の固有の財産となりますため、遺産分割を行わずに、あげたい人に確実に財産を分けることが可能になるため、遺産分割を行いやすくすることが可能になります。

<解説>
(1) 相続対策として生命保険金の活用
相続対策を考えていく中で、生命保険を活用することが有効になってくると考えられます。生命保険を活用することの効果としましては、「納税資金対策」、「遺産分割対策」、「相続税の軽減対策」の大きく3つに分けられることになります。

(2) 遺産分割対策(あげたい人にお金が届く。)
死亡保険金については、保険契約上で指定した受取人の固有財産となります。したがいまして、遺産分割を行うことなく確実に受取人として指定された相続人のものとなるでしょう。また、相続放棄をしたと仮定しましても、生命保険金を受け取ることが可能となるでしょう。
例えば、相続財産としての預金1億円を長男、長女、次男で相続する場合につきましては、遺産分割協議という話し合いによりまして、どのように分けるのかを決めなければならないことに留意しなければなりません。
これでは各社の主張がぶつかりあってしまい、なかなか分割を決めることは不可能になってしまうでしょう。しかし、同じ1億円であったとしても生命保険金であれば、あらかじめ受取人を指定しておくことが可能となりますので、受取人固有の財産としまして、遺産分割協議をすることをせずとも、平等に財産を分けることが可能となるのです。
また、例えば相続財産が長男の自宅の土地1億円だけしかないといった場合においても、次男にも平等に財産を分けようとしても分ける財産が存在していないでしょう。自宅を売却すれば、資金に変えることも可能になりますが、自宅は長男が生活しておりますので、納得がいかないのも当然といえます。結果として遺産分割はうまくいかないことになってしまうでしょう。
そこで生命保険を活用するという方法があります。長男が自宅の土地を相続したと仮定しても、次男には生命保険金1億円が支払われることになります。したがいまして2人とも1億円ずつの相続財産を相続することになって、スムーズに遺産分割を進めることが可能となるでしょう。さらに、事業を承継してもらう長男に自社株や事業用不動産を継続させたい場合における他の相続人に対する活用としても有効だと考えられます。
そのほか、相続人の1人が、遺産を取得した代償としまして、他の相続人に金銭その他の財産を与える分割方法である代償分割に生命保険を活用するなどスムーズな遺産分割が実現可能となります。

(3) 納税資金対策
原則として、相続税は亡くなった日から10ヶ月以内に現金で納付しなくてはならないことになっております。相続財産の仲に相続税を払うことができるだけの現金や預貯金がなければ、相続税を支払うための準備をしなければなりません。現金や預貯金を相続税が支払うことができる額まで貯めるのに時間を要する場合につきましては、その不足分を補うために生命保険を活用することによって、相続税の納税資金を確保することが可能となるでしょう。生命保険に対しての加入については相続が起きてしまってからでは遅くなってしまうため、生前に相続人がいくら相続税を支払うのかを知って、そのうちいくら現金で納付することが可能となるのか、場合によっては不動産の売却や延納、物納も視野に入れて、生命保険金でいくら納付するべきなのか、あらかじめシミュレーションをしておく必要があると考えられます。

(4) 相続税の軽減対策
生命保険につきましては、保険金の全てに課税されるわけではないことに留意しなければなりません。被相続人の死亡によって相続人が取得された生命保険金のうち、「法定相続人1人あたり500万円」については、非課税になりまして、相続税は課税されることはないことを覚えておくと良いでしょう。生命保険に加入していないのであれば、最低限この非課税相当額につきまして預貯金を生命保険に置き換えておくことだけで、相続税の軽減対策として有効になりえます。
なお、生命保険金については相続を放棄した場合については受け取ることが可能となります。しかし、非課税の適用を受けることは不可能となってしまいますので、注意しなければならないでしょう。

(5) まとまったお金の支払いに活用
前述したとおり、被相続人が現預金として持っている場合において、相続人の間での遺産分割協議が必要になってきます。なおかつ、預貯金の場合につきましては、遺産分割協議が成立してから米議変更が行われるまでにつきましては、遺産分割協議が成立しまして名義変更が行われるまでは、凍結してしまうことになりますから、葬儀費用の支払いや病院への入院費用の支払いなど、まとまったお金を引き出そうとしても自由に引き出すことは不可能になってしまうでしょう。しかし、生命保険の場合につきましては、遺産分割を行うことなく、保険会社へ書類を提出できれば、数日間でまとまった資金を現金で準備することが可能になりまして、葬式費用や病院への支払いなどを行う際に有効となるでしょう。

(6) 保険料相当額の贈与
贈与税の110万円を基礎控除を利用することにし、子供や孫に生命保険料相当額の贈与をすることによって、生命保険を活用することが可能になりえます。
子供や孫につきましては、贈与を受けた保険料相当額によりまして、被保険者を親や祖父母とする生命保険に加入することになります。この場合につきましては、親や祖父母に相続が起きたと仮定しても、支払われる保険金につきましては、相続財産ではなく、子供あるいは孫の一時所得となることに留意しなければなりません。したがいまして、少ない税負担で納税資金を確保することが可能となりえます。
なお、この保険金に係っている税額については、
{(保険金額—保険料—50万円)×1/2}×所得税・住民税率
となりえます。

<留意点>
(1) 連年で一定金額を贈与した場合につきましては、その実質によって初年度におきまして、一括贈与をしたとみなされまして、課税される可能性も存在しています。
(2) 子供や孫が受けた金額が、110万円を超えてしまう場合につきましては、贈与税の申告および納税が必要になるでしょう。
(3) 保険料相当額の贈与につきましては、きちんとした贈与の手続きを行う必要があると考えられます。
・ 基礎控除(110万円)以上の贈与を行って、贈与税の申告を行う。
・ 生命保険料につきましては、子供や孫が支払いまして生命保険料控除の申告を行う。
・ 贈与契約書を作成する・確定日付をとる。
・ 贈与を受けている口座の通帳、印鑑の管理については、子供や孫が行う。

(4)子供や孫の所得が高い場合についてや相続財産が少額の場合につきましては、相続税額よりも所得税額の方が高くなってしまいまして、多く税金を納める場合も存在していますので、事前にシミュレーションが必要になります。

遺産分割において、遺言が有効に働くと耳にしましたが、どのような点で有効だと考えられているのでしょうか?

 

<解答>
死後におけるご自身の財産の処分を、奥様・お子様などの残された方に対して伝えるとともに、その実現を図ろうとするものが、遺言になります。遺言書がない場合については、相続人同士の遺産分割協議によって相続財産を分けることになってしまうため、争いが生じやすくなっているようです。協議がまとまらないことになってしまえば、いつまでたっても相続財産を分けることが不可能になってしまうでしょう。遺言は、このような相続人の間の争いを防ぐことが可能になるため、遺産分割に有効であると断言できるでしょう。

<解説>
(1) 遺言のメリット
相続におきまして、最も優先されることになるものについては、亡くなられた方のご意思となります。その亡くなられた方の意思を表したものが遺言となるでしょう。遺言については、遺産の具体的な配分方法の指定を亡くなられた方が可能となるため、遺産分割協議のトラブルを事前に防止することが可能となるでしょう。
また、遺産の配分方法以外にも、ご家族に対する考えや想いについても伝えてその実現を図ることが可能になると思われます。
さらに、遺言によって相続人以外の方に対しても財産を遺すことが可能となるでしょう。

(2) 遺言の必要な方
特に次のような方につきましては、遺言書を作成することがお勧めできますので、覚えておくと良いでしょう。

(一) 子供のいない夫婦
お子様のいない夫婦の相続人につきましては、お二人のご両親がすでに亡くなっている場合には、配偶者と兄弟姉妹になってしまうようです。したがいまして、夫が妻にすべての財産を遺したいと思われていたとしましても、遺言書がない場合については、兄弟姉妹についても夫の財産を相続する権利が生じてしまうことになってしまいます。兄弟姉妹がその権利を主張することになってしまいまして、遺産分割協議書に印鑑を押さない場合につきましては、妻は、夫の金融資産の名義変更や、ご自宅の相続登記さえ、行うことが不可能になってしまうことに留意すべきでしょう。兄弟姉妹と仲がよくなったとしても、相続がおきると揉めてしまうケースが多々存在しているでしょう。遺言書は残された奥様にも、そのような苦労をかけないためにも、作成した方がよいと考えられるでしょう。

(二) 相続人がいない方
配偶者、お子様、兄弟姉妹などの相続人が存在していない方につきましては、遺言書が存在していない場合に関しましても、相続財産は最終的に国に帰属することになってしまいます。もし生前に遺言書を作成することになれば、ご自身が相続後の財産の処分方法を定めることが可能となります。例えば、遺言書で指定することによって、○△協会、○×財団、学校法人などの公的な団体や法人に、ご自身の死亡後に財産をどのように遺したいのかをじっくりと考えまして、遺言書を作成することになるのがベストな選択となるでしょう。

(三) 相続人以外の方に財産を遺したい方
遺言書を作成することによりまして、相続人以外の方に財産を遺すことが可能となるでしょう。もし遺言書が存在しなければ、法定相続人で相続することになりますので、相続人以外の方が財産を相続することが不可能になってしまいます。例えば、長男のお嫁さんが生前に面倒をよくみてくれていたこともあり、長男のお嫁さんに財産を遺しておきたいと考えていたと仮定したとします。相続する権利は存在していませんが、遺言書によって長男のお嫁さんに対して財産を遺す旨を指定することで、お嫁さんも財産を相続する権利が生じることになってしまうことになります。内縁の妻に対して財産を遺したい場合も遺言書が必要になると考えられます。

(四) 相続人同士が揉めそうな方
相続人同士の仲が悪くなってしまって、将来遺産分割で揉めそうな方、もしくは、相続財産の多くが不動産で遺産分割が難しい方につきましては、生前に遺言書を作成することによって、相続人同士が遺産分割で揉めるのを防ぐことが可能となります。例えば、相続人が長男、次男、三男の3人で、相続財産が賃貸物件だと仮定します。賃貸物件を3人で、相続財産を分けなければなりません。賃貸物件を3人共有で相続した場合におきまして、3人の署名・押印がなければ、その物件を売却することも、その物件を担保にローンを組むことも不可能になってしまうでしょう。このような将来のもめ事を避けるためにも、生前に遺言書を作成することにしまして、「賃貸物件については長男に相続させ、長男は次男と三男に現金○○円を支払う(代償分割※)」と指定することができれば、賃貸物件を共有で相続するという事態を避けることが可能になることを留意すべきでしょう。

※ 代償分割・・・相続人の1人が相続によって財産の現物を取得する一方、他の相続人に取得した財産に相当している債務を負担する遺産分割の方法をいうことになります。

(3) 遺言書を作成する上でのポイント
遺言書を作成する上でのポイントについては、以下の4点となるでしょう。
1、 遺留分を考慮した遺言書であること。
2、 相続税を考慮した遺言書であること。
3、 有効性のある遺言書であること。
4、 遺言書は何度でも書き直しが可能であること。

1、 遺留分を考慮してある遺言書であること。
遺留分とは、民法で定められた相続人の相続が可能となる最低限の保障割合ということになります。基本的には、法定相続分の半分になるでしょう。なお、兄弟姉妹については遺留分は存在していないことに留意しなければなりません。
この遺留分を侵害してしまって、遺言書を作成した場合につきましては、遺留分を有している相続人が、自分の遺留分に対する不足分の取り戻し請求、つまり「遺留分減殺請求」をすることが可能となるでしょう。もし、全ての財産を特定の者に相続させるという遺言を書いた場合につきまして、他の相続人から「遺留分減殺請求」をされることによって、その遺留分に相当する財産をその相続人に返還しなければならないでしょう。
せっかく作成することにした遺言書によって、相続人同士の争いが生じてしまっては、元も子もなくなってしまいます。
遺留分を考慮した遺言書を作成するべきでしょう。

2、 相続税を考慮した遺言書であること。
相続税を考慮した遺言書であるということは、イ)相続税法上の有利な特典をしっかりと活用できているか、ロ)納税を考慮した分割内用になっているか、ということになります。

1) 相続税法上の有利な特典を活かしているのか。
相続税法上の有利な特典で主になってくるのは、「配偶者の税額軽減」と「小規模宅地等の減額の特例」となるでしょう。「配偶者の税額軽減」とは、配偶者が相続を行った財産については、一定割合まで非課税となるものとなります。「小規模宅地等の税額の特例」とは、亡くなられた方が居住用、もしくは事業用としまして利用していた土地を相続した相続人が一定の要件を満たすことができれば、土地の相続税評価額の80パーセント(一定の限度あり)を減額することが可能であるというものになるでしょう。
このような特典をフルに活用することができるような遺産分割方法を遺言書で指定することも相続税を考えたうえでは重要となるでしょう。

2) 納税を考慮した分割内容になっているのか。
遺言書を作成しているご自身の意思を尊重したものであるべきであると考えられますが、相続税の納付という観点にも注意を払いながら、遺言書を作成しなければならないでしょう。
例えば、ある相続人の相続財産が土地のみであった場合につきましては、相続税の納付が不可能になってしまう可能性があります。相続人に対して資力がある場合につきましては問題になることはありませんが、納税するだけの資金がない場合につきましては、相続を行った土地を売却することにして納税資金を捻出しなければならないことになります。そのようなケースを避ける目的のためにも、納税額相当の現金を相続人に分けるように金融資産のバランスを考慮した遺言書を作成しなければならないと考えられるでしょう。場合によりましては、物納も考えた遺言書を作成することも検討すべきだと考えられます。

3、 有効性のある遺言書であること。
遺言書を作成したとしても、不備があれば無効となってしまいまして、法律上の効力をもたないことになります。遺言書を作成するにあたっては、きちんとした手続きを踏みまして、作成する必要があると考えられるでしょう。
遺言書については、「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2つの形式が多く用いられることになります。自筆証書遺言とは、作成は簡便なものとなりますが、不備によっては無効となりやすくなり、公証人が公正証書としまして作成する公正証書遺言の方が確実であると考えられます。また、公正証書遺言につきましては、公証役場で保管されることになるため、紛失のおそれも心配する必要もありません、遺言書を作成することになるのならば、より確実性の高い公正証書遺言をお勧めいたします。

4、 遺言書は何度でも書き直しが可能であること。
遺言書には、有効期限が存在していないことに留意しなければなりません。何度でも作り直すことが可能でなければなりません。また複数の遺言書が存在する場合につきましては、最新の遺言書が有効となることに留意しましょう。
財産の内容や財産の評価額につきましては毎年変化することになりますので、遺言書の的的な見直しが必要だと考えられます。遺言書を定期的に見直さなかったために、後々思わぬトラブルが生じることも考えられてしまいます。
遺言書は何度でも書き直しが可能でありますため、気軽に作成して、定期的に遺言書の内容をメンテナンスすべきだと考えられます。

※ 公正証書遺言と自筆証書遺言との比較
・公正証書遺言
場所:公証人役場。
証人:2人以上。
作成方法:本人が口述し、公証人が筆記。(戸籍謄本等の一定の書類が必要となる。)
署名押印:本人、公証人、証人。
裁判所の検認手続き:不要。
メリット
・ 偽造の危険性がない。
・ 検認手続きが不要である。
・ 証拠能力が高い。
デメリット
・ 遺言内容を秘密にできない。
・ 費用がかかってしまう。
・ 作成手順が煩雑である。

自筆証書遺言
場所:自由。
証人:不要である。
作成方法:本人が自筆し、署名押印する。
署名押印:本人のみ。
裁判所の検認手続き:必要である。
メリット
・ 遺言内容を秘密にできる。
・ 費用がかからない。
・ 証人不要。
デメリット
・ 検認手続きが必要である。
・ 要式欠如による無効がある。
・ 紛失、偽造の可能性がある。

相続税の申告をするにあたりまして、アメリカにも財産が存在していた場合につきましては、どのような手続きが必要と考えられるのでしょうか?

 

<解答>
プロベイト(検認)という方法によりまして、相続手続きを進めていくことになるようです。

(1) プロベイト(検認手続)
日本に所在している財産につきましては、遺言あるいは遺産分割協議による話し合いによりまして、手続きが進められることになって、相続登記によって、当該財産の取得者が決定することになるようです。したがって、相続人の間での争いがない場合に限りまして、裁判所の手続きが必要となることはないことに留意する必要があると考えられます。
一方、アメリカに所在している財産につきましては、プロベイト(検認)という方法によって相続手続きを進めていくことになるようです。プロベイトとは裁判所の管理のもと、裁判所が選んだ執行者が遺言書の有無の確認から申告納税及び相続人への財産の受け渡しまでを行う手続きをいうことになります。

プロベイト(検認)手続の具体的な内容については、下記のとおりとなるようです。
(一) 遺言書の有無の確認。
(二) 相続人の特定。
(三) 財産及び債務の調査・確定。
(四) 財産の名義変更。
(五) 費用の支払い・債務整理。
(六) 米国遺産税等の申告・納税。
(七) 残った財産の相続人への分配。

プロベイトは裁判所が手続きを進めていくことになりまして、当該手続きを通じまして財産内容が公開されることもあって、日本での親族中心の手続きとは大きく異なることに留意しなければなりません。

(2) プロベイト手続きの期間
財産の種類や遺言書の有無等によって、大きく異なってくることになるため、一概に言うことは不可能となりますが、1年から3年程度の期間を要するケースが多いようである。早ければ5ヶ月程度で終わる場合もあるようです。

(3) 遺言書・遺産分割とプロベイト手続き
遺言書の有無に関係することはなく、プロベイト手続きが原則的には、必要となるようです。また、相続人の間によって、遺産分割が認められるかどうかに関しましては、各州によって取り扱いが異なってくることになるので、注意しなければならないでしょう。

(4) プロベイト手続きが不要な場合おります
以下の場合に関しましては、プロベイト手続きが不要となるケースが存在しているようです。

(一) 生前信託の認定。
(二) 預金口座等に対して承継者の設定。
(三) 財産が一定額以下(州によって、金額は異なるようです。)
(四) 一定の要件を満たせた共有名義とした場合。

相続財産は、日本とは異なり裁判所が管理することになるようです。
・ 遺言書が存在したとしても、裁判所が当該遺言書を鑑定するプロベイト手続きを経る必要があるようです。
・ 手続きの期間については、1年から3年程度要することになるため、比較的長期にわたることになるようです。
・ 生前信託を設定することによって、プロベイト手続きを経ずに、相続手続きを進めることが可能になります。生前に財産名義が信託に移ってしまっているため、信託を受けた側が主導権を握って、相続手続きを進めていくことが可能となるようです。

遺言書の開封・検認、遺言の執行について教えてください。

 

遺言書の開封・検認、遺言の執行とは、次のようなことをいいます。
なお、遺言書があっても、原則として、全ての相続人による遺産分割協議が成立すれば、遺言書の内容を無視して遺産分割をすることも可能です。

1.遺言書の開封・検認
遺言書に封印がなされている場合、その遺言書を勝手に開封することはできず、家庭裁判所で開封することとなります。
また、公正証書遺言以外の遺言書については、家庭裁判所の検認が必要です。検認というのは、遺言書の内容や体裁を確認して、偽造や変造を防ぐための証拠を保全する手続きです。それゆえ、家庭裁判所は、遺言書が有効か無効かについては関知しませんので、遺留分が侵害されるような内容の遺言書であれば、遺留分減殺請求をすることとなります。
遺言書の検認の手続きについては、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に対して遺言書と「遺言書検認申立書」を提出すると、検認証書が作成されることになります。

2.遺言の執行
遺言の執行とは遺言の内容を実現するために遺産の名義変更等の作業を実行することであり、遺言執行者とはその任務に当たる者のことです。
必ず遺言執行者を指定しなければならないわけではありませんが、遺言内容が複雑であったり、もめそうであったりするなら、指定しておくのが無難です。なお、遺言書において遺言執行者が指定されていない場合に、相続人当事者間では遺言内容の実現が不可能であるようなときは、家庭裁判所に遺言執行者の選任の申立てを行うことが認められています。

遺産分割の方法として、どのようなものがありますか?

 

遺産の確定後、相続人が全員で遺産分割協議をして、遺産分割協議書に署名捺印を行います。遺産分割協議書の作成後に、相続した財産の名義変更をします。とりわけ預金については、相続税の納税資金に充当するのであれば、相続税の申告期限までに名義変更を済ませておかなければなりません。
遺産分割の方法として、次の四つの方法が存在します。

1.現物分割
遺産をそのまま現物によって各相続人に分ける方法で、遺産分割の一般的な方法であるといえます。

2.換価分割
遺産の売却を行って換金した上で、その換金した金銭を相続人で分ける方法です。ただ、遺産売却の際に譲渡益が生じるのであれば、全ての相続人に譲渡所得が生じます。

3.代償分割
相続人のうちの1人が、遺産を取得した代償として他の相続人に対して金銭その他の財産を与える方法です。具体的には、相続財産が土地X(4,000万円)のみであるケースにおいて、長男が土地Xを相続して、長男が次男に現金2,000万円を支払うというような方法です。

4.共有分割
一つの遺産を、複数の相続人の共有持分で所有する方法です。

相続開始より相続税の申告・納付までの大まかな流れを教えてください。

 

相続開始より相続税の申告・納付までは、原則として次のような流れとなります。

遺産や債務の概要を把握し、相続を放棄するか否かを決めます。

相続人を確認します(被相続人と相続人の本籍地より戸籍謄本を取り寄せます)。

相続の放棄か限定承認を行う場合は、相続開始後3ヶ月以内にその旨を家庭裁判所に申述します(申述しなければ単純承認となります)。

被相続人の事業を引き継ぐ場合は、相続開始後4ヶ月以内に相続人が新たに青色申告の届出を行います。また、相続開始後4ヶ月以内に、被相続人の死去の日までの所得を申告します。

遺産の評価を行い、遺産分割をして、それに基づいて相続税申告書を作成します。
・遺産や債務の調査(現物によって確認)
・遺産の評価・鑑定
遺産分割協議書の作成(全ての相続人の実印・印鑑証明)
・相続税申告書の作成(納税資金も検討)

遺産分割協議書に従い、順次、遺産の名義変更を行っていきます。

相続開始後10ヶ月以内に、被相続人の死去時の住所地を所轄する税務署に対して相続税申告書を提出するほか、納税を行います。

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